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テーマ:食べ物あれこれ(49888)
カテゴリ:食事
我家の猫、坊ちゃんの生誕の地という事もあり、長崎の街は大のお気に入りとなっています。そんな長崎の伝統的郷土菓子でありながら「カスドース」の存在を知らず、後に知ってそのユニークさに驚かされた事があります。
カスドースは普通に焼き上げたカステラを使って作られるお菓子で、カスドースという名前の最初の二文字、「カス」はカステラの事を示しています。後半部分の「ドース」はポルトガル語の「甘い」という意味の言葉で、二つを合せる事で甘いカステラという造語になっています。 1550年以降、ポルトガルの商船が出入りするようになった平戸で、カトリックの宣教師たちによって伝えられた南蛮菓子の中にカスドースは含まれていたとされ、当時、卵や砂糖を使うカステラがかなりの贅沢品とされていたのに、そのカステラにさらに手を加え、卵や砂糖を追加して使う事からカスドースは幻のお菓子とされ、黄金色の鮮やかな色合いもあって平戸藩では長らく門外不出のお菓子とされていました。 作り方は、一旦焼き上げて冷ましたカステラから表面の茶色く焼けた部分を除いて食べやすい大きさの短冊状に切り分け、乾燥させます。乾燥したカステラの短冊を溶いた卵黄に潜らせて、鍋に熱した糖蜜の中で揚げるようにしながら卵黄を固め、グラニュー糖をまぶして仕上げられます。 今でも完成したカステラにさらに手を加えるというだけでも贅沢なお菓子と思えるのですが、よく考えてみるとカステラを使ってはいますが作り方そのものはフレンチトーストではないかと思えてきます。 フランスではフレンチトーストは「パンペルデュ」と呼ばれます。ペルデュには「失われた」「ダメになった」といった意味があり、古くなって乾燥し、硬くなってしまったパンを食べるための工夫としてフレンチトーストが誕生したとされています。 乾燥したバゲットに牛乳と卵を合せたものを染み込ませ、ふっくらと柔らかく焼き上げる事で失われたパンを復活させるのですが、甘いお菓子のように仕上げるのは当時としては贅沢な事であり、それがカスドースの作り方に反映された事と思えます。 村の共同の窯でパンを焼いていた頃、数日分をまとめて焼く事になりますが、最後の方ではパンが硬くなってしまう事は避けられず、今日でも硬くなったパンを使うスープメニューを見掛ける事があります。 パンペルデュもそうした工夫から生まれた事とは思えますが、失われたパンという名前が何ともユニークに思え、冷えて硬くなったご飯をお茶漬けにする事で柔らかくする事を失われたご飯と呼んでしまいそうになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年03月09日 08時23分18秒
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