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2021/06/01(火)06:00

ホンダの体質改革

自動車(554)

​​   コロナ前の2019年3月期、ホンダの2018年度の通期営業利益は、四輪事業が2096億円、二輪事業が2916億円。営業利益率は、四輪事業が1.9%、二輪事業が13.9%。  主力の四輪事業が営業利益率1~2%のレベルで、別建ての金融事業で支えられているように見受けられる。  2018年度第1四半期の530億円の営業損失には、英国やトルコの生産拠点の撤退費用、八郷前社長が損切りを決断した680億円が含まれている。  ホンダの4輪車事業はリーマンショック以降、低収益から浮かび上がれていない。  2011年度は東日本大震災の影響では営業赤字に転落。  翌年から黒字に転換したが、営業利益率の最高値は2016年度の4.9%。2017年度以降は3.4%、1.9%、1.5%と右肩下がりで下降。2020年度第3四半期まで(2020年4~12月)の営業利益率は0.8%と、ついに1%を割った。  安定的に営業利益率が10%を超える2輪車事業とは対照的な状態となっている。      ​​  幸か不幸か、日本には4輪事業の優等生トヨタがある。トヨタの営業利益率は8%代を確保している。純利益1兆円で経済界の話題となったのトヨタは、コロナ禍にも関わらず純利益2兆円となった。      ​​ ​トヨタ、純利益2.2兆円 ​ 大回復の要因は何だったのか、決算会見で語られたこと21年3月期通期2021年05月12日 ITmedia トヨタ自動車が5月12日に発表した2021年3月期(20年4月~21年3月)通期の連結決算は、純利益が前期比10.3%増の2兆2452億円と、2兆円の大台を突破した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、上期は販売台数が大きく落ち込んだが、下期で巻き返した。  販売台数(トヨタ・レクサス)は、前期比96.0%の908万台。売上高に相当する営業収益は8.9%減の27兆2145億円、営業利益は8.4%減の2兆1977億円だった。コロナ禍で先行きが不透明だった20年5月時点では、販売台数800万台、営業利益5000億円の見通しを掲げていたが、結果として目標を上回り、高い利益率を達成した。  同社の近健太執行役員は、「リーマンショックから取り組んできた、固定費を含む総原価改善によって、損益分岐台数をしっかりと落とせてきた」と好調の要因を説明。加えて「サプライチェーンについても東日本大震災以降、サプライヤーと減災に向けた取り組み、在庫の保有、代替品の評価の効率化など、ずっと努力してきた」と強調する。   ―  引用終り  ―      ​​  2021年5月12日、本田技研工業(ホンダ)は、2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)決算を発表。  売上収益は14兆9310億900万円(前年同期比6.0%減)、営業利益6336億3700万円(同12.8%減)、税引前利益7899億1800万円(同19.3%減)、当期利益5099億3200万円(同24.6%減)となった。  親会社の所有者に帰属する当期利益4557億4600万円(同25.3%減)。      ​​  「自動車メーカーが十分な利益を出しつつ成長につながる健全な開発を行うためには、8%程度の営業利益が必要」と愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏は指摘する。自動車製造事業は、製品、生産について不断の研究・技術開発と投資が必要なことを踏まえた指摘であろう。   トヨタの利益率は8.2%に対し、ホンダの利益率は3.4%。  ホンダの4輪車事業の営業利益率は、トヨタ自動車(8.2%、2019年度)はもとより、相対的に低価格な軽自動車、小型車中心のスズキ(6.2%、同年度)にも及ばない。     ​​ 2015年6月に就任し今年退任した八郷隆弘社長は、「リストラ社長」と言っても過言ではないほど大胆な構造改革と、前任の伊東社長の世界販売600万台路線の後始末に取り組んだ。  結果的に過剰となった生産設備である、タイのアユタヤ工場で4輪完成車を組立ての第1ラインを休止。4輪の完成車工場、埼玉県の狭山工場の閉鎖を決断(2021年度までに閉鎖)。シェアの低下が止まらない欧州では、英国とトルコの完成車工場の2021年閉鎖を決定。生産環境が不安定なフィリピンからの4輪車生産の撤退。 グローバルモデルの派生車を1/3に削減方針(2025年まで)を示した。      ​​  系列の有力部品メーカー3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)を日立Astemo(アステモ、東京・千代田)としてメガサプライヤーとの競争環境に耐えうるよう再編。 2020年4月、社内外から聖域視されていた本田技研工業の研究開発子会社である本田技術研究所から、4輪車の開発部門のほとんどの機能を本田技研工業本体に統合した。 2020年10月、翌2021年シーズン限りでF1から撤退し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて経営資源を集中すると発表。  カーボンニュートラルの実現に向けての構造改革は一区切りついた。  負の遺産を断ち切り、成長への基盤が整えられた。      ​​ 2021年2月19日、ホンダは八郷社長と次期社長の三部敏宏専務による社長交代会見を開催。  2021年04月23日、 三部社長が本田技研工業株式会社社長就任会見を開催。  ホンダはいつまでも「これから」の企業を目指しているようだ。          ​​

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