働けるうちはずっと働け…高齢者の家計の収支
2000年の制度改正で、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げが行われた。定額部分は65歳。 支給開始年齢は、男女ともに60歳から65歳に引き上げられた。男性は3年に1歳ずつ、2013年度から12年かけて、女性の場合は3年に1歳ずつ、2018年度から12年かけて引き上げられる。 高齢者の人口比率が高まっても、移行措置の途中のため、政府は厚生年金の満額の支給開始年齢の引上げを提案できずにいる。 いずれにしろ、60歳定年と年金支給開始年齢65歳までの間の空白の5年間があるので、60歳で定年となった後も働いて収入を得た方が家計の面で安心だ。 現在65歳までの雇用継続が推奨されているが、企業の定年年齢の引上げは日本の経済社会の要請ということになる。 年収580万円、中小企業勤務の59歳会社員…定年間近だが「75歳まで働かせてください」のワケ幻冬舎ゴールドオンライン 2022年11月20日 … (略) … 1986年~91年のバブル景気のころ就職した「バブル世代」も、いまや50代。定年を控え、老後の資金繰りに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、定年直前まで「無対策」で生きてきた59歳会社員K氏の収支シミュレーションをもとに、安心した老後を送るための資金形成について解説します。 … (略) … <59歳収支>・合計消費支出:44万5,000円【内訳】 食料:5万円 住居:10万円 光熱・水道:2万円 家具・家事用品:1万円 被服及び履物:5,000円 保健医療:1万5,000円 交通・通信:1万5,000円 教 育:20万円(仕送り込み) 教養娯楽:1万円 その他の消費支出:3万円Kさんは、ボーナスを含めた「年間580万円(月額48.3万円)」でなんとか生活している状況です。60~61歳で予定される収支はどうでしょうか。シミュレーションしてみます。<60~61歳収支>・合計消費支出:34万5,000円【内訳】 食料:5万円 住居:10万円 光熱・水道:2万円 家具・家事用品:1万円 被服及び履物:5,000円 保健医療:1万5,000円 交通・通信:1万5,000円 教 育:10万円(仕送り込み) 教養娯楽:1万円 その他の消費支出:3万円 教育費が1人分減った状態でも、再雇用後の「月収27万円」では赤字です。もし退職した場合、夫婦の年金20万円でも赤字となるため再雇用が必要であることがわかります。62歳以降はどうでしょうか。 <62~74歳収支>・合計消費支出:25万5,000円【内訳】 食料:5万円 住居:10万円 光熱・水道:2万円 家具・家事用品:1万円 被服及び履物:5,000円 保健医療:1万5,000円 交通・通信:1万5,000円 教 育:0円 教養娯楽:1万円 その他の消費支出:3万円 教育費がなくなり黒字で生活できるものの年金だけでは暮らせず、貯金を切り崩していくのも心配なため継続して働くことが必要です。 <75歳収支>・合計消費支出:16万5,000円 【内訳】 食料:5万円 住居:1万円 光熱・水道:2万円 家具・家事用品:1万円 被服及び履物:5,000円 保健医療:1万5,000円 交通・通信:1万5,000円 教 育:0円 教養娯楽:1万円 その他の消費支出:3万円 75歳になってマイホームのローンが終わり、ようやく年金暮らしができそうです。 ちなみに、総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の一般的な生活費の平均は下記となります。K氏の生活費は、平均並みといえます。<2020年度、65歳以上の夫婦のみの無職世帯>・合計消費支出:22万4,390円【内訳】 食料:6万5,804円 住居:1万4,518円 光熱・水道:1万9,845円 家具・家事用品:1万0,258円 被服及び履物:4,699円 保健医療:1万6,057円 交通・通信:2万6,795円 教 育:4円(※) 教養娯楽:1万9,658円 その他の消費支出:4万6,753円※内訳における教育の割合は統計上0.0% (出所:総務省統計局 令和2年家計調査年報家計収支編) ― 引用終り ― 60~61歳の消費支出鵜を単純に1年分の12倍すると414万円となる。年金の空白期間の5年分で2070万円となる。 消費支出の金額をみると、60歳時点で老後資金が2000万円あった方がよいことが分かる。 60歳退職以降に住宅ローンが残っているとか、子育て中であれば、家計の負担はさらに重い。 62~74歳の消費支出鵜を1年分の12倍すると306万円となる。 また、平均寿命と健康寿命は10歳程度の差があり、75歳まで働くということは、元気なうちは一生働く(働け!)というに等しい。 憲法には「健康で文化的な生活」を保障する条文があるが、政府は厚生年金だけで十分暮らせる金額を支給すると言ったことはない。また制度変更を行い、支給額を調整(減額)するので、マスコミや評論家が語るような「年金財政の破綻」はまずない。 物価スライド、マクロ経済スライドで、経済(物価)変動に合わせて支給される公的年金の機能は重要だが、老後の生活資金を退職するまでにいかに確保するかの自助努力も同じくらい重要になっているのが、少子高齢化の現実だ。日本年金機構公式サイト・マクロ経済スライド・物価スライド