『「昭和天皇実録」の謎を解く』 6月の読書(5)
『「昭和天皇実録」の謎を解く』
半藤 一利、保阪 正康
御厨 貴、磯田 道史
文春新書 2015年3月20日
2014年9月9日、『昭和天皇実録』公開。
宮内庁書陵部編集課による全61冊、約12,000頁の大冊の最初の2巻が、2015年3月末に刊行。
『実録』の読みどころのガイド。
目次
はじめに 半藤一利
明治34年~大正元年
第一章 初めて明かされる幼年期の素顔
大正10年~昭和16年
第二章 青年期の挫折
昭和6年~昭和11年
第三章 昭和天皇の三つの「顔」
昭和12年~昭和16年
第四章 世界からの孤立を止められたか
昭和16年
第五章 開戦へと至る心理
昭和17年~昭和20年
第六章 天皇の終戦工作
昭和20年~昭和22年
第七章 八月十五日を境にして
昭和20年~昭和63年
第八章 “記憶の王”として
おわりに 保阪正康
P100
半藤 実は私は、昭和天皇には三つの顔があると考えているんです。ひとつは「立憲君主としての天皇、もうひとつは陸海軍を統帥する「大元帥」、そして両者の上位にさらに、皇祖皇宗に連なる大祭司であり神の裔である「大天皇」がおわす、というのが私の仮説です。
P184
半藤 この時の若槻は「自存自衛はともかく、東亜新秩序、あるいは八絋一宇といった理想に目をくらまされてはならぬ」と説くんです。すると東条が、「理想を追って現実を離れるようなことはしない。が、理想を持つことは必要だ」と反発する。それに対する若槻の発言が、『実録』の最後にあたる「理想のために国を滅ぼしてはならぬ」です。
P255
保阪 後に御用掛の寺崎英成が当時のことを振り返って、「陛下は米国の短波で日本軍の所在を知る状態」と日記に書いていますが、それが裏付けられた格好ですね。陸海軍は天皇に本当のことを報告しないから、アメリカの放送を頼りにしていた。