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カテゴリ:短歌/俳句/小説/戯曲
純一 君は、「理想のタイプの男性」との出会いと、「出会った男性を誰でも口説ける話し方」のどちらが欲しい? 美里 そりゃ、もちろん、誰でも落とせたら最高です。 純一 「一億円の当たりくじ」と、「百万円以内なら当てる方法」のどちらが欲しい? 亘 方法です。続ければ一億円も超えられるかもしれませんから。 純一 そうだね。そんなふうに、人が好きだと思わないこと、人が後回しにしそうなことに地道に取り組めば、人には見えない楽しさが見えて、どんな仕事でも好きで得意になるだろう。 じゃ、もう一つ質問。君たちは「やりたい仕事」と、「どんな仕事でも楽しめるセンス」のどちらが欲しい? (三人 唖然とする。) 純一 まさか、「やりたいこと」なんて言う学生はいないよね。それよりも、どんな仕事からも楽しさを発見して手に入れられる知識と考え方があれば、何をやっても「やりたいこと」になる。 つまり、どの宝くじを買っても「当たり」にできるってことだ。 麻衣 じゃあ、「やりたいこと」って…。 純一 こだわる価値も意味もない考え方だ。 こんな言葉は、君たちに迎合し、甘やかす大人の誘惑に過ぎない。君たちも「魚」と「釣り方」のどちらが欲しいかと聞かれたら、「釣り方」だと答えるはずだ。理由は、釣り方さえ学べば、どんな魚も熟練次第で釣ることができるからだ。 しかし、世の中の学生の大半は、「魚くれ」、「魚はどこだ」、「この魚は気に入らない」、「欲しい魚が見つからない」と言いながら、肝心の釣り方の練習は全くやらない。 亘 「やりたいこと」って、損な考え方ですね。 純一 そうだね。もちろん、それがしっかり定まって、実現のために努力している若者は素晴らしいけど、最初から「夢の完成品」を求める考え方じゃ、いつまでたってもスタートさえできない。 大事なのは、何でもいいから、一つ習慣を定めて、その仕事が好きになるまで地道にやってみることだ。例えば、このサークルでも… 「野菜の栽培」 「筋トレ」 「ブログ」 「メイク」 「歴史研究」… なんかを好きで頑張ってる学生も多いけど、僕はいつも、「本気で学び、本気で遊べ」と言ってる。 何でも、本気でやれば面白くなるからだ。面白ければ本気になるんじゃない。 就活でも、「やる気になったらやる」なんて学生も入るけど、逆だね。「やったらやる気になる」んだ。まず自分が目の前の現実に、人生に働きかけることだ。本気は決して疲れない。疲れるのはいつも、ウジウジとした中途半端だ。 麻衣 「本気は疲れない」…。いい言葉ですね。 純一 ま、僕はそう言いながらも、最近は年のせいか、張り切りすぎてちょっと疲れてるんだけどね。というのは冗談で、それはあくまで肉体的な疲れに過ぎない。 自分が心から同意した未来は、現実に「必然性」をもたらす。そうしてその必然性に従い、現実に影響を与えていく過去を積み重ねることで、いつしか、自分が人生に、つまり未来に及ぼせる影響を実感し、確信していくんだ。それがやりがいというものだ。 自信とは、同意をもって過ごした過去の集積が、未来に与える展望にほかならない、そうは思わないか? 美里 あたし、感動してきちゃった。 純一 だから、「やりたいこと」なんて無駄なこと考えてるヒマがあったら、スポーツでも趣味でも遊びでもいいから、徹底的にやってみることだ。そうして、物事を好きになる訓練を習慣化することだ。そうすれば、就活の悩みなんて、いつしか忘れてるよ。 亘 もっと早くここに来ていれば…。 純一 大丈夫。まだまだ間に合うよ。ここは夢に間に合うためのサークルだから。 学生たちは、テッド・ターナーの「過去が未来を作るのではなく、未来が過去を作る」という言葉が好きだ。 君が今日、ここに来ようと思ったときには、見学は「未来」だったけど、今はもう、過去になった。未来が過去に影響を与えたんだ。過去が未来に影響を与えるんじゃない。 亘 ぼ、僕、今まで、無意味なことばかり考えてました…。 麻衣 先輩、一緒に頑張りましょうよ。 美里 参ったね、あたしたち三人とも、まさか入部しちゃうなんて。 亘 よろしくお願いします! (純一、司会に入部を知らせる) 司会 おい、みんな!また新しい仲間が増えたぞ。温かく歓迎して、応援していこう! 学生たち はい! 司会 じゃあ、来週は合説があるから、みんなで行って情報を共有しよう! 麻衣 合説…来週なんですね。でも私、何も準備してない。 純一 まず、何も考えずに行ってみるといいよ。 亘 オレも一緒に行くから。 美里 じゃ、あたしも!モチベーション上がって、来週が楽しみだなぁ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.23 03:38:32
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