国際的な視野をもつ批評で活躍した文芸評論家で米文学者、東京大名誉教授の佐伯彰一(さえき・しょういち)さんが1日、肺炎のため東京都内の病院で死去した。93歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男で東京工業大教授(米文学・米文化史)の泰樹(やすき)さん。
1922年生まれ、富山県育ち。43年東京大英文科卒。米ミシガン大などで日本文学を講じた。ヘミングウェーやフォークナーらの研究・翻訳のほか、戦前、戦中に知識人の転向や挫折を見せつけられたのを原点に50年代から文芸評論に取り組んだ。68年から東京大、83年から中央大の教授を歴任した。
三島由紀夫研究の第一人者としても知られ、新潮社刊行の全集(35巻・補巻1、76年完結)の編集を担当。95年に東京・世田谷文学館、99年には山梨県・三島由紀夫文学館のいずれも初代館長を務めた。谷崎潤一郎らが自己の資質を見いだす過程を追った「物語芸術論」で80年読売文学賞。他の著書に「日本人の自伝」(74年)、「評伝三島由紀夫」(78年)、「自伝の世紀」(85年)など多数。保守系の論客としても知られた。
評論家の業績で82年日本芸術院賞。88年日本芸術院会員。99年に正論大賞(特別賞)。
毎日新聞2016年1月6日 東京朝刊