冷やし中華冷やし中華編 「さくらちゃん、着いたよ。起きて。」 「う~ん、やっと着いたの~?ここ何処?って、あの建物はTVでやってる『高原へいらっしゃい』のホテルじゃないの!?」 「知ってた?良かった。TVでは、ホテルだけど、実際は八ヶ岳高原ヒュッテといって、八ヶ岳高原ロッジっというホテルの別棟で、レストランなんだ。」 「へ~ちゃん、私は美味しい冷やし中華が食べたいって言ったんだよ?」 「そうだよ、外見はフレンチに見えるでしょう。東京にある、赤坂璃宮って中華料理屋さん知ってる?」 「ううん、知らない。」 「譚彦彬氏がシェフをしているお店で、そこが、フロアーのスタッフまで連れて来て、夏の間だけ、ロッジの宿泊客や別荘の住人に中華を提供しているんだ。」 駐車場からヒュッテまで短い距離ですが、高原の青く澄み切った空の下を歩けば、木々の間から、夏だというのに、鶯やカッコウの鳴き声が、二人を迎えてくれます。 「ア~気持ちいい~!!外の芝生の、パラソルの下で食べたいな~。」 「あそこは喫茶でしか使えないから、食後にね。それより、早く冷やし中華を頼まなきゃ。冷やし中華はランチタイムにしかないスペシャルメニュウだから。」 冷やし中華を待っている間、さくらちゃんは、白漆喰と、太い柱の内装を興味深そうに見ています。壁や階段の手すりなど、いたるところに木彫りの熊が飾られ、床も壁も手斧が施されています。 「ねえ、ねえ、どうしていっぱい、熊が飾ってあるの?この辺りに熊がよく出るの?」 「えらい!!食い物以外で、初めていい質問です。」 「ナニ~、へ~ちゃん。飲み屋の女の子だと思って、バカにしてない?こうみえても、天然酵母を育ててパンだって作るし、着付けのお免状だって持ってるんだから。」 「そ、そんなつもりは・・・。でねっ、この建物は元公爵徳川義親邸を移築したものだけど、義親公爵が大正時代に木彫りの熊を八雲の農民に副業として彫らせて、北海道の木彫りの熊がはじまったんだ。本当の熊狩りも大好きだったみたいだけどね。さくらちゃん、木彫りの熊ってアイヌの名物だと・・・」 「ワア~ッ来た来た!!綺麗!!トマトの冷やし中華ね。これって、冷製トマトのカッペリーニの中華版みたい。 帆立と烏賊と海老の湯引きが上手にしてあって、ちゃんとそれぞれの味がするわ。トマトのタレとよく馴染んで心地いい噛み応えね。香菜がいい香り~!」 「たっぷりのトマトソースがプリプリな麺に絡んで、美味しいわ。トマトの酸味が上手に使ってあって、安い冷やし中華みたいに酢醤油で胸が痛くならないから嬉しい。微かにエビチリ風の香りとセミドライトマトみたいな濃いトマトの味もする。楽しい~!! へ~ちゃん、ありがとう。私、初めて冷やし中華食べて、もう一度食べたいって、思ったわ。 この夏、サークルKの390円の冷やし中華から、ファミマも、異人館も、石川橋の川菜も、銀座アスターも、グランコートの花梨でも食べたわ。マリオットの梨杏の一番豪華な2500円の冷やし中華や、もちろんスガキヤの元祖マヨネーズつき冷やしラーメンもね。でも、どれも、まあ、1回食べればいいかな~としか思えなかったの。 ファミマの480円だって、鳥肉の酒蒸しや人工フカヒレやきゅうりに、チャーシュウ、茹でエビ、カニカマ、ゆで卵と、値段からすれば、とっても立派だったわ。 でも、何かおかしいと、ず~っと感じてた。それが今日ハッキリしたわ。料理として、一体感がなかったの。タレと麺と具がバラバラで、素っ気無いサラダを食べてる気がしてたの。しかも、料理が来た時には、タレがほとんど、皿の底に溜まっていて、底からひっくり返して混ぜないと、味が絡まないしね。」 「ここのちゃんとした中華が食べてみたいわ!!へ~ちゃん、夕食も予約してよ。」 「もちろん、いいけど、夜の仕事どうするの?間に合わないでしょ?も、もし、よかったら今日はお店休んでロッジに、泊っ、泊まって行く?今日は晴れてるから、バ、バスタブから、流れ星がたくさん見られるよ。」 「・・・シャンパン用意してくれたら、へ~ちゃんと流れ星みながら、お風呂入ろうかナ・・・」 「・・・ホ、ホント??・・・とうとうこの日が来たんだ~!!・・・おじさん、・・・・夢みたい・・・・・・・・・・・・・・」 「へ~ちゃん、・?・?・?へ~ちゃんったら!!もう、着いたよ!!へ~ちゃんが美味しい冷やし中華食べたいって言うから、わざわざ八ヶ岳まで連れて来てあげたのにぃ!!もう!!女性に運転させて、自分だけ、ビール飲んで助手席で寝ちゃうか?普通(怒)。 ボーイさん、この人、部屋に運んでやって。それから、ツインはキャンセルね。その人が一人で泊まると思うから、シングルにしてください。私帰るから。もう!!プンプン!!」 冷やし中華って、好きですか? 夏のお約束?マヨ付スガキヤの冷やし中華(略して、スガ冷やし)を食べたことがありますか? ラーメンが270円なのに、何故、スガ冷やしは450円もするのでしょうか? サラダ感覚で食べてもらおうと、スガキヤがマヨ付きで冷やし中華を売り出した話は有名ですが、サラダというわりには、胡瓜、プチトマト一個、人参と、野菜が少ない気がします。話は違いますが、スガキヤラーメンのスープって少しぬるいと思いませんか? マヨネーズ付きは愛知県独特と思われがちですが、岐阜県の持ち帰りおにぎりチェーンの「子の日」(その後「子の子」に改称、のちに倒産)は30年前から冷やし中華にマヨがそえて有ったそうです。 福島県、石川県あたりでも、昔からついていて、石川県が発祥のラーメンチェーン、8番ラーメンではマヨ付だそうです。ローソンはすでに、全国で冷やし中華にマヨネーズ付きを販売しています。 冷やし中華自体の誕生は1937年、仙台市青葉区錦町の「龍亭」という中華屋さんが夏の客足を維持しようと考案した説が有力ですが、1929年出版の「料理相談」という本に、「冷蕎麦」の作り方があり、茹でたシナソバにチャーシュウ、胡瓜、酢漬けらっきょう、筍をのせ、冷スープ、醤油、酢、砂糖からなるタレを掛ける。とあるそうです。 ところで、全日本冷やし中華愛好会という言葉を聞いたことがありますか? 1975年に、ジャズの山下洋輔氏が、一年中冷やし中華を食べられるようにしよう!と立ち上げた会です(この年を冷中元年と定めています)。当時、くだらない事を大真面目でやっちゃうゲバゲバ的宝島的発想が流行っていました。そして、1977年4月1日、有楽町の読売ホールで、第1回冷やし中華祭りが盛大に開催されました。会長が山下洋輔氏から筒井康隆氏に代わり、元号が鳴門元年になりました。中州産業大学教授タモリの講演があり、平岡正明・奥成達氏の対論、坂田明氏の「正調冷やし中華の作り方講座」(助手が矢野顕子!)等など、豪華なお祭りが、冷やし中華のために執り行われました。どなたか、この時の信者の方はいませんか? コーチン 052-624-2600 名古屋市緑区有松町大字桶狭間字清水山13-19 鶏油の個性的なラーメンのお店ですが、ここの冷やし中華こそサラダ感覚です。 スイカ、りんご、サクランボ、パイナップル、セロリ、きゅうり、レタス、かいわれ、トーモロコシ、赤・橙・黄ピーマン、人参、ツナ、チャーシュウ、ゆで卵がフルーツパフェのように山盛りです。フルーツは別のお皿に移して、後からデザートにするといいくらいです。750円 |