テーマ:ショートショート。(1084)
カテゴリ:創作
狙った獲物は百発百中。どんな依頼も請け負う、プロ中のプロ。ただし、俺の素性を探ろうとした奴や俺を裏切った奴は、世界の果てまで追いかけて地獄送りにしてくれるぜ。
俺様は世界最強スナイパー、パルコ30だ。パクリだって?撃つぜ! さて、今日も依頼をこなさなくちゃな。ちなみに、依頼料は4000ドルだ。安いって?俺は無敵のパルコ30。でも、仕事以外は基本引きこもりだから、相場なんて分からねえ。 人気のない海岸へと赴く。今回はここで依頼を聞く手はずになっている。もうそろそろ来るはずだが……。 「おお、貴方がパルコ様ですな。私は依頼主の」 「俺の前に立つな!」 ボグシャアーン! ――またやっちまった。素早く死体を処理して、何食わぬ顔で去る。そりゃあ、引きこもりにもなるってもんさ。電車すら乗れねえ。 さて、しっかり反省するのが俺だ。今回はファミレスで待ち合わせだ。さりげなく近づいて、依頼者の後ろの席をキープだ。ふふふ、さすが俺。 「振り向くな……。要件は何だ」 「おお、貴方が……。私どもの会社の商売敵が、実に汚い手で私どもの会社の評判を下げたのです。4000ドル……いえ、6000ドル払います!どうか、依頼を引き受けてください」 「……分かった。報酬は千葉興業銀行へ振り込んでおいてくれ」 「え?貴方日本人」 ドキュゥーン! 放たれる銃弾。倒れる依頼者。阿鼻叫喚の店内。それにまぎれて逃げる俺。あんたがいけないんだぜ。俺の素性を探ろうとした、あんたがな……。 やれやれ、非常識な客だったな。まあ、いくら近場が良いからって日本の地方銀行を選んだ俺も悪い気もするが。今度からは、横浜銀行に次ぐ大きさの地方銀行、千葉銀行にしよう。これならバレまい。 さて、次の依頼主のところへ行こうか。次は、公園だな。お、もういるぞ。10分前に来るタイプか。感心感心。 「ロシア政府の要人、ウラディマル・ブッチーンの殺害を依頼したのはお前だな」 「……」 「10月8日の12:40に往来でパレードをやる。そこを狙い俺が撃つ。唯一警備が甘いのは、キーロフスタジアム前。変更はないな」 「……」 「なければ、千葉銀行に4000米ドルを振り込んだ後、仕事に」 「あの」 「……どうした?」 「あなた、どなたですか?」 「……」 ダキュゥーン! 「ああ、パルコ30!これはいったいどういう」 「俺は依頼者の裏切りを決して許さない……」 「はあ?」 ズキュゥーン! いくら30分前に場所変更したからって、ちゃんと人払いくらいしとけよな、まったく。時間がないなんて言い訳は聞かないぜ。それも立派な裏切りだ。 結局、今月も一回たりとも依頼を受けないうちに終わってしまった。まずいな。そろそろ貯金が尽きる。 やっぱ働くかあ。セブンイレブン辺りで。 狙った獲物は百発百中。どんな依頼も請け負う、プロ中のプロ。ただし、俺の素性を探ろうとした奴や俺を裏切った奴は、世界の果てまで追いかけて地獄送りにしてくれるぜ。 俺様は訳あって休業中の世界最強スナイパー、パルコ30だ。パクリだって?撃つぜ! 「店員さん、レジお願いしま」 「俺の前に立つな!」 ゴッキャーン! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 17, 2006 01:03:57 AM
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