テーマ:ショートショート。(1084)
カテゴリ:創作
5時を告げる音楽は、夕暮れとともに心を刺す。物足りないよ。こんなんじゃ。
ジェットスキーに乗って、スキップするよに滑っていく。右へ左へ。飛んでは跳ねて。ターンスライド。ドリフトドリフト。パンチだキックだ。よーそろー。船首を上げろ。空に向かって。 月の見える日だった。空気を切り、一番星を目指して走る。雲裂き、冷える風を目一杯浴びれば体を縮こませるも、スピードは落とさない。地球なんて、少し上がれば宇宙と同じさ。ただ、重力と空気があるだけ。それももう消える。 空深く暗闇。だが、それは希望ある暗闇。光に照らされた黒いカーテンと、そこに転がる石ころ共の歓迎を受け、重力の束縛から解放される。地球は青かった? そんなことに注目してるくらいじゃあ、大きな人間とはいえないさ。宇宙は狭かった。これだね。 火星を横目に、小惑星帯の石ころ一つ掴み取り。肩筋の許す限りぶん投げて、空高くフライハイ。いつか出会うことがあるなら、もっと素敵な出会いに違いあるまい。木星を抜け、土星のわっかにご挨拶。ここまでくるとちょっと心細い。なんっつっても、どこまで言っても暗がりだ。世紀末もすぎたというのに。もう少し採光を気にした作りにしやがれってんだ。 天王星に興味はない。海王星もどうでもいい。冥王星なんてもっての他だ。スピードアップ。目的は崇高。後ろなんぞ振り返らず、とりあえずアクセル大全開。惑星は点からやがて線になる。面にならないのが惜しいところだ。そこでちょっくら一回転。線は曲線になり、走る。上下左右斜め四次元なんでもありあり大喝采。くるくるくるくる回転捻転。光の筋は球体を作る。これでこそ宇宙。生まれた壁を突き破り、生まれ変わった新人類ザッツミー。がりがりごりごり走り続ける。 やがて見えるは一つの光。確かにきらめく命の息吹。ユカイでたまらぬ俺の唇。ギアはトップ。ブレーキ不調。おやつは300円までながら、一つも持たぬこの余裕。暗闇を切って走る。ただひたすら光へ向かって。 ただいま。心配したかい? 太陽様。 どこまで行ってどこまで来たのか。とりあえず、戻っていないのだけは確かさ。俺は、高らかに叫んだんだ。 「宇宙は狭かったー!」 さあて、目指すは青い星。今夜のおかずはハンバーグだ。ちょっと綺麗に見えてくるね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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