187252 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

自然再生と地域社会

自然再生と地域社会

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Category

Recent Posts

Archives

2007.11.28
XML
カテゴリ:コラム
※この文章は2005年10月21日に当会のHPに掲載されたものです。

エゾシカ管理とオオカミ再導入 part 1



以前参加したシカ管理のセミナー報告に関して、主催されていた横国の松田先生のブログのほうにコメントを頂いていました。


http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20051020


そこで、多少幾つか誤解を招いていた点があったようなので、下記のような文を直接お送りしました。何がともあれ、絶滅種に関する議論が起こることは大変良いことだと個人的には思っています。


(下記の文は、松田先生のブログにもそのままコメントという形で投稿しました)


-----------------------------------------------------------------------


 研究会のブログをご覧頂きありがとうございました。ご意見を頂きました文章を書きました江成といいます(先日の自然再生事業指針に関しても意見を出させていただきました)。松田先生のブログや著書はよく拝見させていただいております。


 さて、ご指摘頂いた点につきまして、僭越ながらコメントさせていただきます。


 私個人の意見としても、今日のエゾシカ問題の解決策としてオオカミ再導入に期待することは無理があると考えています。その理由は松田先生がご指摘したとおりだと私も考えています。あくまで、健全なエコシステムプロセスを回復させることを目標にした自然再生という枠組みの中にオオカミ再導入を位置づけるべきであると思います。研究会のホームページに掲載した文章は、エゾシカ問題の解決策としてのオオカミ再導入論を主張することを意図しているものではありません


 健全なエコシステムプロセスの構築を目的としたオオカミ再導入を実施するうえでの生態学的な条件として、1)予め餌動物となりうる急増した哺乳類の個体数を森林生態系に不可逆的な悪影響を生じさせないレベルにまで人為的にコントロールしておくこと、2)「オオカミの捕食圧」と「餌動物の自然増加率」のバランスを保てるように、後者の割合を予め抑制しておくこと、の2点があるのではないかと考えています。1)は人為的な管理を必要とする短期的に実施すべき課題ですが、2)は自然の遷移に任せることを目標にした長期的なスパンの課題です。ご指摘いただいた屋久島の事例のように、原生的な自然(林冠の閉じた林)は、人為的撹乱を受けている自然(林冠の開いた林)と比べて、そこに生息する動物に対してある一定の自然増加率を抑制する効果が期待できるとすると、オオカミ再導入対象地域において、そうした原生的自然を取り戻すための自然再生が予め必要になると考えられます。北海道はともかくとして、日本でそうした原生的自然を取り戻すことが出来る地域が限られていることがよく言われますが、少子高齢化による「縮む社会」が始まった日本において、長期的な視点を持てば、原生的な自然の回復もあながち机上の空論ではないと私は考えています。


 すると、オオカミ再導入は日本のグランドデザイン、そして自然再生事業の中に明確に位置づけるべき課題ではないかと私は思います。今直面する問題に短期的に対処する手法の検討ももちろん重要であると思いますが、エコシステムマネジメントの中にエゾシカをはじめとした野生生物の管理を位置づけるのであれば、より全体論的かつ長期的な政策も同時に進行させるべきではないかと私は思います。


 オオカミ再導入に関しては、肯定的もしくは否定的な二項対立的な枠組みで議論が行われることが多いですが、より幅広い客観的・科学的な観点から、リスク管理に基づく問題解決の枠組みを必要としていると私は考えています。私自身はオオカミそのものを対象に研究しているわけではないのですが、研究会には日本では数少ないオオカミの生態研究を行っている院生が数名います。今後、彼・彼女らの研究にも期待し、研究会の中でも、より客観的・科学的な検討を行い、そうした知見に基づく情報を社会的にアピールしていきたいと考えているところです。


長文をお許しください。


自然再生研究会(農工大)


 江成広斗


---------------------------------------------------------------------------------


エゾシカ管理とオオカミ再導入 part 2


さらに松田先生からコメントを頂いたため、再びこちらでも以下のような返答をしました。


松田先生からのコメント


http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20051021/1129860804


以下、本文。


非常に参考になるコメントありがとうございました。


 私たち自身も「オオカミ再導入ありき」という考えは持っておりませんし、そこから議論をはじめているわけでもありません。自然再生の枠組みの中で絶滅種の再導入を考え、それを現実的な問題として扱う上では、まずは再導入肯定派も反対派も同じテーブルについて議論することが必要ではないかということを念頭においています。そのため、研究会でも数回にわたりオオカミ再導入に関連するセミナーや集会を行ってきました。そこでは、再導入の是非をただ議論するのではなく、オオカミ再導入に関わる生態学的・社会学的なリスクを一つ一つ客観的に検証し、その上で再導入の是非を議論するという姿勢で行っています。つまり、オオカミ復活運動という姿勢ではなく、なるべく中立な立場で評価していきたいと考えているのです。


 ご指摘いただいたアオギスの例は非常に考え深いものだと思います。系統や固有の遺伝子を維持するべきという遺伝学的観点が重視された結果になってしまったならば、それ以外の社会・文化的、経済的なアオギス再導入の意義が十分に議論・検証されていないように感じられます。実際の合意形成が非常に難しいものであることを如実に表す事例のように思えました。


 たまたまですが、こうした関連で絶滅種の再導入に関わる自由集会を来月実施することにしています(オオカミは対象にしていませんが)。


http://n-r-p.hp.infoseek.co.jp/theory/wildlife11.html


また新たな議論が生まれれば、何らかの形でご紹介していきたいと考えています。種の再導入に関して、先生から今後もご意見・ご提案を賜ることができれば幸いです。


自然再生研究会 江成広斗・角田裕志






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.11.28 11:11:34
コメント(0) | コメントを書く
[コラム] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X