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テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:SSもどき
「え? は? ちょっと待って。痴漢って、本当に!?」 教授夫人は面食らっているようだ。これは信じたと思ってもいいかもしれない。 だが、ここで何故か弱気になるのが抜田である。 「ええ、それで、一千万が無理なら、五百万でも・・・・・・」 「クイズミリオネアの五問目と七問目の間みたいに飛ぶのね。あれって、五百万までは細々区切ってあるのに、五百万から一千万の間って、二問しかないのよね。その二問がネックなんだけど。って、本当にあの人が痴漢なんてしたの!?」 「はい。信じたくないお気持ちは分かります」 「信じたくないんじゃないわよ。信じたいけど信じられないのよ!」 「え? あ、だったら、本当なんで安心して・・・・・・じゃなくて、あれ? おかしいな。ま、いっか」 「何がいいのよ!? よくないわよ」 「あ、やっぱりそうですよね。残念ながら目撃者もいるんです。あの、旦那様に代わりましょうか?」 「お願い」 抜田は真壁に携帯を渡した。すると、自分の携帯が尻ポケットから軽快なメロディーを奏で始めた。 みっなおそう みなおそう♪ ソンポ! 某自動車保険会社のCMソングである。コアラが鼻をもぎとって電話機にし、自動車保険を見直そうと歌い踊るのだ。 「真壁、家素本から電話だ」 「ばか! 切れ! 今は大事な仕事の最中だ! ったく、家素本も分かってるだろうに、何やってんだ」 真壁はぶつぶつ言いながら、大事な仕事とやらに戻っていった。 真壁はああ言ったが、家素本は何も分かってはいないだろう。 抜田はそう思いながら着信を切った。しかし、またすぐに鼻コアラのダンスが始まった。 自動車保険を見直そう~♪ そ○ぽ○4で見直そう♪ 自動車保険よりも友達を見直したい・・・・・・。 真壁に睨まれ、抜田は携帯の電源を切った。 「あなた? 本当に痴漢なんて・・・・・・」 抜田を睨んでいた真壁の耳に、不審げな女の声が入り込んできた。真壁は携帯を耳に当てたまま、平身低頭した。 「すまない。つい、魔が射してしまったんだ。君には何と言って謝ったらいいか・・・・・・」 「謝るだなんてそんな・・・・・・。でも、本当に本当なのね?」 「本当に本当なんだよ、ベイビー」 「・・・・・・・や、や・・・・・・や・・・・・・」 「や? ああ、嫌だって言いたいんだね?」 「違うわ! やったじゃない!!」 「は?」 「ついにあなたも女に目覚めたのねー! 女の子に痴漢ができるようになるなんて! もうその子に何千万でも払ってあげなさいよ! ついでに結婚もしてもらったら? ほら、その子が特別かもしれないし。だって、まともな男だって、誰にでも欲情できるわけじゃないでしょ? 一応、好みってものがあるだろうし。その点、その女子高生はあなたの好みにあってたわけでしょ? もう、言うことないじゃない!」 つづく ミリオネアで区切りが大まかになるのは、150万からですよね・・・・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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