ごめんね、にゃあ君       

2009/02/08(日)14:06

ごめんね、にゃあ君36

ごめんね、にゃあ君(55)

春の訪れ 初めての冬は無事、過ぎていった。ようやく春が訪れ、寒さも和らいできた。にゃあ君は外へ出て行くかと思ったが、相変わらず昼間は外、夜は室内の生活を送っていた。  時々夜、外出して夜中になっても帰って来ないことがある。夜通し起きて待っているわけにもいかないので、戸締りをして寝る態勢に入る。しかし、気になって寝付けない。しばらくして覗くと、庭への出入り口の戸口でちょこんとお座りしている。 「ごめん、ごめん。帰ってたの。」  慌てて開けると、スッと入って来る。すべての生活はにゃあ君を中心に動いていた。  にゃあ君の好きな遊びの一つに「かくれんぼ」があった。にゃあ君は時折リビングに置いてあるソファーの陰にいることがある。何となくそこにいるのではなく、意識的に隠れているのだ。リビングを出て、しばらくして戻って来ると、にゃあ君の姿が消えている。ドアは閉まっているので、どこかにいるはずだ。テーブルの下を探す。にゃあ君用ハウスの中も探す。名前を呼びながらソファーの後ろを覗くと、そこにいた。 「あら、にゃあ君、そんなところにいたの。」 「んにゃあ!」  時々、ソファーの陰にいるのがわかっていても、覗かずにゃあ君を探し回る。 「にゃあ君どこ?」  声をかけながら、リビングを往ったり来たりする。敢えてソファーの後ろは探さない。にゃあ君はソファーの陰でじっと息を潜めている。しばらく探し回った後、見つけられずに遠ざかるふりをすると、痺れを切らしたにゃあ君は 「んにゃあー!(ボクここでした!)」 と、躍り出る。  にゃあ君を抱き上げ、仲良くソファーにお座りする。まったく可愛いにゃあ君だ。  にゃあ君は握手も覚えた。 「にゃあ君、あくしゅ!」  初めのうちは、にゃあ君の指先に軽く触れる程度だった。指を近づけると、時にはびっくりして引っ込めることもあった。指先で何度か撫でてから、ゆっくり指を引っ込める。これを根気良く毎日続けているうちに、握手の意味がわかってくる。  ある日、いつものように握手をしようと、にゃあ君の前足に指を載せた。この頃にはもうにゃあ君の指先を軽く握るようになっていた。ひとしきり握って手を引っ込めようとすると、にゃあ君の前足が私の指先を追い掛けるように伸びてきた。 「待って、もうちょっと。」 とでも言っているようだ。 「にゃあ君、もう少し握手する?」  再び手を伸ばしてにゃあ君の前足を握る。まるで手をつないでいるように。  にゃあ君の足の裏にはゴムのような肉球がついている。押すとぽにょぽにょしていて弾力がある。飛び下りた時のクッションであり、忍び足をする際の消音材の役目があるそうだ。 「にゃあ君、ここ、ぽにょぽにょだねー。」  面白がっている私の顔を、にゃあ君は嫌な顔ひとつせず見つめていた。  

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