ごめんね、にゃあ君       

2010/10/31(日)20:00

ごめんね、にゃあ君44

ごめんね、にゃあ君(55)

椅子取り合戦 我が家に大きな荷物が届いた。差出人は父で、開けてみるとリクライニング式の籐製の回転椅子だった。にゃあ君専用に椅子を一つ確保して以来、父が泊まりに来ると椅子が足りなかった。狭いリビングだが、家具を移動させ、置き場所が決まった。  庭へのサッシ戸からは少し距離があるので日は差し込まないが、にゃあ君は新しいもの好きだ。座布団を置くとすぐにジャンプし、椅子の上に陣取ってしまった。そこで丸くなってから、 「にゃあ!(これボクのでしょ)」 と、つぶらな瞳で問いかける。あんな瞳で見られたら、いやと言えるわけがない。 「それじゃあ、一緒に使おうね。」  その日から、にゃあ君との椅子の取りっこが始まった。取りっこといっても早い者勝ちだ。先に座った方に優先権がある。しかし、にゃあ君が座ってすぐの時なら、抱きかかえて一緒に座る。にゃあ君が寝てしまったら、もうどかせない。横にある古いソファーで我慢する。私が先に座った時は、にゃあ君は自分の椅子や絨毯に寝そべっている。ところが何か物を取りに立ち上がると、すかさずにゃあ君が横取りする。とにかく素早い。ほんの一瞬腰を上げただけでも、その隙間に入り込む。気をつけないと、にゃあ君の上にドスンとお尻を載せかねない。 「にゃあ君、危ないでしょ。のし猫になりたいの?」  苦笑しながら、お尻の下にもぐり込んだにゃあ君を抱いて膝の上に載せる。にゃあ君は不満顔だ。  膝の上のにゃあ君は、たまに胸元までせり上がってくる。膝上といっても既に半分はお腹の上に乗っているのだが、そこで上体を起こし、ずりっずりっと徐々に伸び上がる。そしてヒトの左の胸元に顔を埋め、右前足でしっかり抱きつくのだ。更によじ登る格好で顎に頭を押し付け、てっぺんをスリスリとこすりつけてくる。これに勝る喜びはない。  時折、にゃあ君は膝の上で眠ってしまう。無邪気な寝顔は天使のようだ。「んにゃ、んにゃ」「んーんー」と小さな声で寝言を言うこともある。安らかに眠るにゃあ君を見ていると、こちらもだんだん眠くなる。 「にゃあ君、こんな日がいつまでも続くといいね。」

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