カテゴリ:凍結オレンジ。(BL)
大叔父には若頭しか知らない愛人がいました。
極西の本家からは車で十分程先のマンションに、その愛人を囲っていました。 愛人はカフェを経営しており、そこに大叔父は若頭と数名の男衆を連れていっては、 日頃の緊張した生活のストレスを解消していたのです。 志信さんはおろかアヤも知らないその愛人の存在に、山本組は気付いていました。 普段は鉄壁の守備を誇る極西の本家にいる大伯父ですが、 このときばかりは丸腰です。 勿論、若頭は道具を持っていますが、隙だらけと言っても過言では無いでしょう。 そこに山本組は付け込みました。 「永哉にやらせろ」 組長は道具を持ったばかりの永哉に命じます。 「頭を取って来い」 永哉は一礼すると、すぐに車に乗り込み、そのカフェを目指しました。 銃声が響いたのはそれから二十分後のことでした。 大叔父を庇った男衆を撃ち、外したと気付いた時点で店内に乱射してすぐに逃走しました。 「アヤ、起きろ」 いつになく緊張感がみなぎる空気の中で、アヤは目を覚まします。 「すぐに支度をしろ。置いていくぞ」 志信さんは既にスーツ姿です。 アヤは布団を手繰り寄せて自分の体に巻きつけると、のろのろと歩きます。 「アヤ。何のつもりだ」 「裸なので。出来ればあっちを見ていて貰えませんか」 「今更、何が恥かしいんだ!」 志信さんが呆れて布団を取り上げると、アヤが箪笥の隅に逃げ込んで体を隠します。 「意識しすぎだ。私は遊ぶつもりは無いぞ、早く服を着ろ!」 「…こんなことまでしておいて」 アヤが鎖骨を指しました。 そこには志信さんが付けた跡があります。 「服を着ればわからないだろう!」 「それはそうですけど。何だか冷たい」 「冷たくしているつもりは無い。アヤ、おまえに構っていられないんだ」 「何か、ありましたか?」 アヤは勘のいい子です。 「俺には言えないことですか?」 下着を履きながらアヤが尋ねます。 「現場まで連れられて何も知らなかったでは、済まされないでしょう」 「…そうだが。アヤを巻き込みたくないんだ」 「俺は姐ですよ。組に起きたことなら知らずにはいられません」 アヤは永哉が仕掛けてきたと予想を立てていました。 「あの組には俺の昔の友人がいます」 「は?」 志信さんがアヤにシャツを渡しながら聞き返しました。 「俺が出たほうが、確実に沈静化できます」 「甘い」 志信さんはアヤのボタンをとめながら呟きます。 「極道の争いは、子供の喧嘩では無い」 「でも、多分。いけます」 志信さんは「はあ」と溜息をついてシャツ姿のアヤを腕に抱きました。 「アヤの思うようにことが進めば、全国に極道なんていない」 「そうでしょうか」 「今も、シマ争いが始まっているんだ。アヤ、私の言うことを聞け」 アヤはそれでも不服顔です。 「誰も傷つかずに、終われないんでしょうか」 「何を言い出すんだ。アヤ…おまえは留守番にしよう」 「俺も行きます」 「何処かわかるのか」 「山本組でしょう」 「そのまえに大伯父を迎えに行くんだよ」 永哉が乱射した弾が若頭に当たり、無傷なのは大伯父だけでした。 極西にとっては不幸中の幸いでしたが、永哉は違います。 さんざんな結果に組長は怒りをあらわにして、永哉を木刀で打ちました。 「次だ。次でしとめなければおまえを処分する」 永哉は切れた唇から流れる血を拭いながら、それでもアヤを想います。 何とか、アヤだけは…。 アヤだけは巻き込みたくないと願う永哉に、新しい道具が渡されました。 「二丁持て、とのことだ」 若頭が低い声で告げました。 組を壊してこいと、言われたのです。 笑えるところが無くてすみません。 9話に続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/12/25 06:30:45 PM
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