カテゴリ:色彩カンビアメント(BL)
自分の変化に気付く事に僕は鈍いのかも知れない。
他人に何かを指摘されるなんて面倒で真っ平ごめんだった。 でも、颯秩に空気を読まれて僕は初めて他人に興味を持ち、彼を目で追っていた。 時には自分から近づいた。 これが変化だろうか。 良い事なら歓迎なのだが今ひとつぴんと来ない。 それは颯秩の態度に不安すら覚えるからだ。 彼とは一線を越えたが、僕に対して愛情があるというより興味が沸いて、 ちょっと構ってやったらついてきたので抱いた・だろう。 のけぞる僕の体に舌を這わせながら、何を思っていたのか。 僕が大事なら……行為の後で態度が変わるものではないだろうか。 彼は変わらない。 べたべたと甘えることも出来ないし、 突っぱねて、 機嫌を取らせるよう仕向ける手練れた駆け引きも未経験な僕は何をすべきかわからない。 放課後、僕はまた自転車を引いて帰宅の途に着いた。 颯秩は何も無かったかのように級友と連れ立っていた。 何か、心に穴が空いたようだ。 「ただいま」と声をかけると母さんが「丁度良かった! お茶買ってきて」と言う。 顔を見せずリビングから声がしたぞ、自分はクーラーから離れず僕をこき使うつもりか。 しかし親に逆らうような思春期は過ぎた。 むしろ、今は労わろうとさえ思い始めている。 クーラーは少し苛立つが我儘を聞き入れよう。 お茶は僕も飲むのだし。 引いてきたせいか今更自転車で行くのも面倒に思えて、 制服のままコンビニへ向かうと丁度ドアから男性が出てきてすれ違った。 「あ、きみ」 不意に声をかけられて驚いて振り返る。 先日の『何処かで見かけた人』だ。 「何ですか」 「失礼。うちで働いている子と同じ制服だったので呼び止めてしまった。 リツという子なんだが。 しかし、おや? もしかして立葵さんの弟かい」 どういう事だ、 以前、強面の人と一緒にいたから颯秩がバイトをしている店の人だとは想像出来たが。 「兄をご存じで」 「たまに来て下さるんだ。名刺も頂戴している。よく弟の話をしていてね。 こうして見ると顔はあまり似ていないけれど聞いていた話でのイメージでそうかなと、 カンで声をかけたんだ」 少し砕けた口調で気安く人を呼び止めるのは商売柄なのか。 「兄がお世話になっています」 「はは、それはこちらの台詞だよ。きみ、20歳になったら店に来るといい。 リツを雇っておいてこう言うのもおかしいが」 本当におかしいよ。 「颯秩も未成年です。法に反しませんか?」 「顔に似合わず啖呵を切る。なかなか肝が据わっていると見た。 社会勉強してみるかい?」 くいと親指で指した先に黒い車が停まっていた。 「悪いが、後部座席にはワインが先に乗り込んでいるからきみは助手席で」 引き返せない空気だ。 何故だろう、口調は穏やかなのに取り込まれた感覚。 母さんには悪いが、お茶はもう少し後で飲んでもらおう。 来てはいけないと言われた店。 だけど、この前は有無を言わさず連れられた店でもある。 複雑な思いだ。 車に乗せられた後、他の店に仕入れだろうか、立ち寄ったので7時を回った。 店内は相変わらず薄暗い。 女性客が数人、小さなテーブル席に陣取っている。 僕を連れてきた人は結局名乗らず、カウンターの奥へ仕入れたものを運び、 クーラーの温度を下げた。 「リツ。空調が悪いんじゃないか? 火を使うときは気をつけろと言ったが」 「お言葉ですが、今日は蒸し暑いですよ」 そう答えながら颯秩が奥から姿を現した。 「あー」 呆れ顔を見るのは何度目だろう。 「……お疲れさま」 こんな挨拶しか返せない。 「おいで」 険しい表情の上、顎で指図されて抵抗すらかなわずに渋々カウンターに着席した。 「この前は連れ込んじゃったけど、もう来ては駄目と言ったはず」 「わかっているよ。でも偶然このお店の人に会って」 「誘われたからほいほいついてきたの? ちょろいな」 これは流石に腹が立った。 的を得ているからなのだが。 「丁度、海老が食べたかったんだよ! 前にデリをしてくれた料理」 我ながら情けない言い訳だった、 彼が何を考えているのか知りたい気持ちが心の底にあり悩ませた。 実のところ。そんな時、渡りに船だったのだ。 すると颯秩は下唇に指を当て、軽く首を振った。 「ちゃんと本当の事を言いな。もう、壬はそれが出来るはず」 「僕は颯秩の友人なのかな?」 違う。 もっと素直になりたい。 あと一息、喉まで来ている言葉がある、聞きたいのはそれだ。 「それは言いたい事とずれているよね」 お見通しか。 頷けないでいたら「歯がゆいな」と呟かれた。 このままでは颯秩を怒らせてしまうのか。 しかし、この気持ちをどう言えば伝わるのか。 今まで散々、人を遠ざけてきた罰が当たった。 「壬。おまえは他人との関わりをうざいと思う独りよがりの愚者じゃないからね」 そうだ。 「颯秩。僕はきみが好きだ。きみが現れてから僕は変われた。 感謝しているんだ。だから君が大事だ、そう思ってる」 彼の反応が怖いが、しかし目を反らさず思いの丈をぶつけた。 颯秩は「わかった。ありがとう」と答えると、いつもの穏やかな表情に戻った。 「大事か。俺は今までそう言われた事がなかったから新鮮だな」 彼にしては珍しく照れているのか前髪をかきあげた。 「リツ。いつまで遊んでいるんだ。ホールを任せるぞ」 奥から声がする。 聞かれていただろうか、恥ずかしい。 「はい」 颯秩は「気持ちが嬉しかった。また何か御馳走するよ。気をつけて帰りな」と ホールへ出ようとする。 慌ててその手首を掴んで引き留めた。 「壬? 仕事なんだけど」 「わかってる。でも、あのさ、1つお願いがあるんだ。どうしても聞いてほしい」 「どうかした?」 「このお店を辞めてくれないかな」 ●猛暑なので● 昨年衝動買いしたサルエルパンツを履いてみたら、生地が薄いから風通しが良くて涼しくて おお、これはいいぞと1枚購入 そうしたらさらに厳しい猛暑なので、リピートします まだ買った分が届いていないけれど ヨガパンツにできるので運動も楽にできますよ ボトムに迷っている方にお勧めです
自分は10分丈です お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/07/20 01:46:49 AM
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