『朧月夜』の世界
菜の花畠に 入り日薄れで始まって、文部省唱歌、『朧月夜』の1番は、 夕月かかりて におい淡しで終わります。この『朧月夜』の歌の情景は、一面に広がる菜の花畑に夕暮れが訪れると、太陽は西の空に沈みかけ、東の空には、満月に近い夕月が登り始めている、春の夕暮れ、といった情景です。私はこの『朧月夜』の歌の情景を思い浮かべる時、いつも頭に浮かんでくるのが: 菜の花や 月は東に 日は西にという俳句が詠われた情景です。この俳句は、江戸時代の画家であり、俳人でもある与謝野蕪村が詠ったものです。いちめんの薄緑の中に拡がる黄色い菜の花畑。薄黒くなった山の端、満月に近い月が東の空に出たばかり。太陽は西に傾いているのですが、まだ沈んではいない。これこそまさしく、『朧月夜』の歌の世界そのものではないでしょうか。