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2012.08.09
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 1969(昭和44)年、

 保険の調査員として、

 岩手県へ、

 1週間の出張をした、

 数件の調査を抱えてのことで、

 2,3日かけて盛岡での調査を終え、

 宮古市に入った、

 宮古の宿を拠点に、

 市内や、

 隣接の村々で、

 調査をこなし、

 明日は東京へ戻るという日に、

 田老へ入った、

 故人の被保険者宅を訪れるツメの調査で、

 これが終われば、

 あとは宮古の宿に戻り、

 一息入れてから、

 近くの繁華街に繰り出し、

 一人で好き勝手の打ち上げをやるつもりだった、

 このとき、29歳、

 生涯でいちばん酒が強かった頃である、

 田老の死亡した被保険者の調査は、

 そのときの調査案件の中では、

 もっとも問題の少ないもので、

 その分、調査は楽だった、

 被保険者は加入してから1ヶ月あまりで死亡している、

 これは早期死亡と言って、

 保険金請求の申請が上がってくると、

 必ず調査にかけられる、

 この被保険者は、

 宮古市内の病院で息を引き取った、

 死因は胃がんだった、

 主治医によると、

 初診時すでにかなり進行していたという、

 被保険者は、

 自宅に近い開業医の紹介状を持って、

 宮古の病院を訪れている、

 主治医の言では、

 主訴と触診から推して胃がんが疑われる、

 旨が紹介状に書かれていた、

 その開業医に初めてかかった日が、

 保険加入日以前で、

 そのときの病名が胃潰瘍、

 慢性胃炎など、

 胃がんと因果関係にあるものなら、

 加入契約時にそれの告知がなく、

 明らかに不正契約になる、

 保険会社は解除権を行使できる、

 病院を辞したその足で、

 田老のその開業医を訪れた、

 初診時、

 被保険者は胃に鈍痛と、

 しこりを訴えている、

 開業医は触診しただけで、

 胃がんを疑い、

 紹介状を書いた、

 初診日は、

 保険の契約日の後である、

 被保険者は以前に何度か受信している、

 風邪とか腎盂炎で、

 胃がんとの因果関係はない、

 無診査加入の保険なので、

 ここまでの調査で、

 もう問題ない契約だった、

 念のため、

 契約を担当した保険外交員に面接し、

 被保険者の加入前後の様子を、

 聞いたが、

 告知事項の質問時にも、

 特に変わった様子はなかったという、

 告知のときに、

 胃が痛むとか、

 さわるとしこりが感じられるとかの異常があるのに、

 黙っていれば、

 告知義務違反になる、

 でも、

 保険会社はそこまでの調べは求めない、

 調べようにも、

 被保険者はもういない、

 前日のうちにそこまで調べて、

 最後のツメは、

 この日に残したのである、

 被保険者の自宅は、

 防潮堤のすぐ内側にあった、

 前の日に、

 港を海側にして、

 田老の市街地を、

 X字型に分断する防潮堤を見て、

 しばらく呆然と見上げ、

 しばらくそれに沿って歩いた、

 田老の防潮堤のことは、

 チリ津波を幕下相手に、

 横綱が相撲を取ったように跳ね返し、

 犠牲者は皆無だった、

 と話には聞いていた、

 聞きしに勝る壮観な建造物だった、

 被保険者宅は、

 東に延びている防潮堤の、

 すぐ内側にあった、

 応対したのは60代後半の母親で、

 「息子はこの堤防があるんで、
  枕を高くして寝られると言ったす。
  まさか40前でがんで逝くとはなあ」

 母親は涙ぐんで嘆いた、

 その42年後の3.11.

 10メートルの防潮堤を軽々と乗り越えて、

 大津波は田老を壊滅させた、

 死者行方不明者約200人、

 43年後の9月5,6の両日、

 田老に入る、

 3・11から、

 田老が立ち上がリつつある姿を、

 この目で見たい、

 田老子供たちの背中を、

 そっと押せたら、

 ほんとうに嬉しい。

 

 

 

 





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最終更新日  2012.08.09 18:14:22
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