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テーマ:癒しの情報館(1087)
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母は
母は貴方が心配だ 1年前 桜の花びらが飛びしきる昼下がり 「相変わらずどろんこだね」 貴方は母の背中に声を降らせた 母は草むしりの手を止めて、 「えっ、もう帰ってきたのかい」 びっくりして 振り返りながら立ち上がった 「これ、くさや」 貴方は新聞紙で無造作に包まれたものを差し出した 「島の子供たちと合宿してきただけだから」 貴方は白い歯を見せて笑った 「このあたりなら 庭でくさやを焼いても苦情はこないだろ」 いい終えないうちに背中を向けた 左肩だけで背負ったリュックを 気楽に揺らしながら 貴方は道へ出ていった 貴方からいただいたくさやは まだ半分以上が冷凍されています いつものことだけど 1つのメールが 貴方が今いるところの厳しさを教えてくれる どろどろ どろどろ 数10キロ離れたこの地にも 空爆の音が伝わってきます たったそれだけの文言だもの 母は想像をたくましくして 慄くしかない 少し栄養失調っぽい体つきの男の子に アッカンベーをさせた添付写真の無邪気さに 母は笑った、 でも、二声だけで母は笑顔を凍らせた 今貴方はどこにいてどうしているの 1500グラムに充たない貴方を、 必死に育てたときよりも 今の貴方のほうが心配です お腹にいるときに怠けていたことを まるで取り戻すかのように すくすくと大きくなる貴方に 母は何度感謝したことか 中学で難民の写真に目を凝らし 高校でアジアの難民キャンプを慰問した その貴方を誇りに思った でもでも その頃から母は貴方が心配でした 元気でやっているというメールを… いや 今すぐここに姿を見せてほしい 母は 母は貴方が心配だ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.01.29 15:18:33
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