岩手県の過去最高の輸出と東北の貿易データ
NHKニュースによると、昨年の輸出額は約4千億円と過去最高を更新。岩手県とJETRO盛岡貿易情報センターが県内648企業を対象にアンケートの結果、県内企業の輸出額は3,994億円で前年比30.8%も増加。全体の7割以上を自動車・自動車部品が占め、2,880億円(42%増)。またアワビやフカヒレなど水産物が29億円で40%増。岩手県では、原油高の影響で、金ヶ崎町で生産の小型自動車が、北米を中心に需要が高まったのに加え、中国・大連に岩手県の事務所が開設された効果で農水産物の輸出が伸びた、という。------------東北の海外交易と言えば、確かに金ケ崎町の関東自動車などは大きな輸出元だろうなどというイメージはあるが、各県毎の輸出入の数値データのイメージは沸きにくい。そもそも、通関ポイントの統計以外に、把握するものがないのではないか。だからこそ、このニュースのように、「県内」企業にアンケート調査するしかないのだろう。横浜税関のをみると、東北地域の貿易概況(平成20年4月)をみると、財務省貿易統計(通関統計)は、関税法に基づき税関に申告された輸出入の数値を集計したもの。そして、東北地域の概況は、6県に所在する税関官署の集計だ。すなわち、 宮城県・・・ (横浜税関) 仙台塩釜税関支署、石巻出張所、気仙沼出張所、仙台空港税関支署 福島県・・・ (横浜税関) 小名浜税関支署、相馬出張所、福島空港出張所 青森県・・・ (函館税関) 青森税関支署、青森空港出張所、八戸税関支署 岩手県・・・ (函館税関) 宮古税関支署、大船渡税関支署、釜石出張所 秋田県・・・ (函館税関) 秋田船川税関支署、秋田空港出張所 山形県・・・ (東京税関) 酒田税関支署、山形出張所である。山形県が東京税関の管轄で、宮城県が横浜税関の管轄というのは面白い。これによると、平成19年の東北地方の貿易額は、輸出8,284億円、輸入15,548億円。輸出は16.2%の増で18 年連続の増加。全国シェアは1.0%で昨年より0.1 ポイント増加したが、輸入(10.2%増、全国シェア2.1%)で見ても、まだまだ少ないという感じだ。輸出の主要品目としては、事務用機器、鉄鋼、半導体等電子部品が挙げられている。輸入では、金属鉱・くず、原油・粗油。県別では、 宮城 輸出 4828億円 輸入 6421億円 福島 544 4188 青森 1381 2380 岩手 264 184などとされ、岩手県の通関は多くないことがわかる。冒頭のNHKニュースの輸出4千億円とは、通関統計では仙台港で計上されるということか。しかし、輸出商品別をみると、「自動車」は東北全体で19,381台、9,209百万円、「自動車部分品」は、17,672トン、15,431百万円で、合わせて250億円足らず。とすると、ニュースの岩手県の2,880億円は、東北以外からも送出しているということなのだろうか。一般には関東自動車の完成品は仙台港から輸出しており、これを釜石港がねらっている、と聞くのだが。おそらくは、把握する数値の概念の違い、か。何とも消化不良。もう少し調べてみたい。JETRO盛岡センターのサイトに、2006年の岩手県の貿易という資料がある。今回ニュースで報じられたものの1年前のバージョンだろう。輸出中の「自動車」は1965億円。そして、品目全体で使用港湾別の統計を見ると、名古屋港は1965億円でシェアは64.3%である。仙台港は60億円しかない。港湾別輸出の項の説明には、「輸出額の6割を占める自動車が名古屋港から出荷されている」、とある。ちょっと不可解な表現だが、よく見ると、品目の中での自動車の額と、港湾の中での名古屋港の数値が一致している。偶然なのか本当なのか。消化不良のまま、とりあえず筆を置く。