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2013.12.31
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カテゴリ:宮城
(前編から続く)
 栗駒耕英の開拓史(前編)(2013年12月7日)

■朝日新聞仙台支局『宮城風土記1』宝文堂、1984年 から
(おだずま註:内容は当時の時点のものです。また、実名で登場する人物はイニシャルにしました。)

8 山草の販売

栗駒山一帯は高山植物の宝庫。耕英開拓地には特別保護地区の世界谷地第一、第二湿原があり、山草ブームで貴重な植物が心ない盗掘者達に運び去れていく。耕英の人たちにはそれが残念でならない。

開拓地の中心部、県道と開拓道路の交差点近くで高山植物の生産販売をする「雲海園」を営むIさん(51歳)は、迫町の出身で農家の三男。炭焼き、ナメコ栽培の傍ら、耕英森林保護組合長を務め、盗掘の臨時監視もした。高山植物が簡単に手に入れば乱獲も減ると考え、細々と高山植物の生産を始める。昭和45年火災で新住宅を建設するのを機に、農業を捨て植物園一本にかけた。

実生の苗を丹精込めて育てた。園を開いて1年後にはどうにか販売できるようになった。初めはハイマツ。サラサドウダン、ハクサンシャクナゲ、ナナカマドなど。アツモリソウやクマガイソウなども。Iさんの敷地には150種を越える山草樹木があり、栗駒山の自然を凝縮するかのようだ。1979年には山麓で珍種イシヅチランの群生地を発見し、一部を採取して現在も育てている。

子ども達は山を下りてしまったが、自然を愛しながら山で暮らすつもりで居る。

9 二世の仕事

耕英の主産業はダイコンとイチゴ。イチゴは露地のほか冬場のハウスイチゴがあるため、相当数の家族は冬期間だけ山を下りる。ハウス栽培をしていない人でも冬は里に建てた家や子ども達の家で過ごすため、耕英に残る人はごく僅かだ。

雪に埋もれる冬の耕英でも仕事はないものか、と考える耕英二世も現れ始めた。裸一貫で原生林に入植した「耕英一世」にたいして、耕英で生まれ育ち現在の働き手になっている20台後半から30台の中堅層が「耕英二世」で、耕英小中学校で学び、ほとんどが一度耕英を離れて、約10年の後に本格的に農業をやろうと帰ってきた。一度外から耕英を見ている感覚で、一世には思いも寄らない発想がある。

昭和22年の入植先遣隊の一員Sさんの長男(33歳)は、耕英中学校を出て川崎市の会社に勤めるが、耕英に戻ったあと、夏は農業、冬は鳴子スキー学校栗駒分校長をしている。もしスキー場ができれば耕英住民の暮らし向きも良くなるはず、と雪との融和を模索する。

また、冬の仕事として生け花に使用する花木の販売に取り組む二世集団もある。昨年夏に耕英花木研究会が発足した。OさんSさんKさんOさんYさんの5人は耕英二世だ。代表のYさん(36歳)は、せっかく耕英に戻ってきたのに単に作物を売るだけでは意味がないと考え、栗駒町農協からの呼びかけに乗って、生け花の花木の栽培と出荷に挑戦。先進の名取市を視察したが、名取では採算がとれないとの理由でやっていない自然木の催芽を、耕英ならできると直感して、昨年11月に県補助金も得て開拓道路脇の原野に催芽室を建てた。苗木の枝を切って芽を出させ、冬場に出荷できれば、冬の仕事を確立させられると語る。

10 脱サラで民宿

観光客の宿泊施設として、古くからある駒の湯のほか、いこいの村栗駒、キャンプセンター、白樺荘、民宿四季美、高原荘、民宿秣森、がある。

民宿秣森を経営するKさん(41歳)は脱サラ経営者。戦後の入植を経験もしくはその地を引く人々の中で、昭和56年から山で暮らし始めた耕英新入生だ。東京生まれで、戦後の食糧難時代に茨城県に。小名浜の高校を出て東京に就職したが、休日には登山やスキーばかりしていた。特に水上温泉の上ノ原高原に惹かれて、そこに住もうとさえ考えたが、耕英花木研究会代表のYさんが同じ勤め先にいた縁で耕英を訪れるようになった。48年にYさんの妹と結婚を機に耕英永住を決意。周囲を説得して御沢近くに264平米の民宿を建設。砂金を抱えての船出は苦しいが来客は伸びているという。

民宿の名は建築許可申請の際に町の担当者が便宜的に付けたものだが、今では気に入っている。かつての開拓とは違い、平和の中での開拓。自分のように後から耕英に来たい人のためにも、魅力ある耕英づくりの先鞭を付けたい、と話す。





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最終更新日  2013.12.31 12:01:35
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