カテゴリ:東北
(高専の立地と誘致の歴史(その1 立地状況)(2015年12月9日)から続く)
高等専門学校の制度は、高度成長期に工業系の専門技術者を育成するため、学校教育法を改正(昭和36年)して導入されたものだ。昭和30年代後半に一斉に設立され、以来日本の産業発展に大きな貢献をしている。 『高等専門学校50年のあゆみ』(独立行政法人国立高等専門学校機構・全国公立高等専門学校協会・全国私立高等専門学校協会、2012年)から創成期の概要を、立地調整の観点を中心に、まとめてみる。 1 学校制度としての論議 戦後の6-3-3-4制のなかで、職業教育充実の観点から、当時暫定的制度とされていた短期大学と併せて、6-3-5(6)の新線となる専科大学制度の法案が提出されたが、成立はならなかった。短期大学側との調整がつかないため、経済界の強い要望を背景に、工業分野に絞った高等専門学校の制度が立法された。 2 校地の選定 国立高専の校地については、当初の12校決定のあと、新設校の誘致をはかる地方公共団体向けに文部省が誘致ガイドラインといえるものを定めた。校地3万坪と教職員宿舎用地3千坪、500坪程度の仮校舎、学生仮寄宿舎などが記され、これらが昭和38年度創設校以降に踏襲されていった(後日、地方財政法との関連で、国による購入又は国有地との交換とされる)。 中学校卒業人口が増加し、高校増設の財政課題を抱える地方公共団体からは、高専の法案上程後、さっそく誘致のため用地を用意して文部省に働きかけるところもあったという。 3 開校の状況 昭和37年4月の開校は全国19校(国立12都立2私立5)。北海道・東北では、函館、旭川、平、長岡で、いずれも国立。うち長岡は前年発足の国立長岡工業短大を改組。 翌38年には、新設が16校(国立12大阪府立1神戸市立1私立2。なお国立新設のうち高知は前年私立で設立を移行)。北海道・東北では、八戸、宮城、鶴岡。 続いて39年には、国立12校が開設。北海道・東北では、苫小牧、一関、秋田。40年には8校(国立7私立1)。 以上の4か年で54校が設立された。その後、昭和42年には、法律で工業に限定されていた専門分野に商船が加えられ、富山など国立5校が開校(工業では木更津に国立1校)。さらに昭和46年には、既存の3電波高校(仙台、詫間、熊本)を、国立電波工業高専として開校した。 4 配置状況と誘致活動 4年間で54校、10年で63校と、短期の間に数多くが設立されたことは教育史上の大改革といえるが、この間の誘致活動の影響もあり、国立高専の立地は、国立大の工業系学部が置かれた都市と重ならず、県内で工業生産の比較的盛んな地域に新設となった事例が多く、その8割は県庁所在都市以外である。 結果的に、当時まだ低かった高等教育進学人口を増やし、県内あまねく高等教育機会を提供するためにも有効に機能し、また、寮を含めた施設整備が、比較的経済的に恵まれない家庭環境にある学生の進学機会の拡大にも役割を果たしてきたと考えられる。地域の教育と産業教育の向上のため、当初から地域と結びつく実践を続けて高専の一つの大きな特色である。 (おだずまジャーナル注。ここは原文の表現をなるべく尊重しました。高専の果たす役割と当時の地域や教育の事情を、私たちはよく理解しなければなりません。) 電波工業高専3校開校のあと、八代と徳山に誘致活動がおこり昭和49年に国立2校が開校。 なお、平成21年には4県で、工業高専と、電波ないし商船を1校に統合(高度化再編)し、新たに、仙台高専、富山高専、香川高専、熊本高専が発足。 (おだずま注。仙台は「宮城」高専とは称さなかったのですね。) 5 地域の要望と学科増設 初年度開設校が完成学年を迎える昭和41年からは、学科の増設に政策が移行した。 (おだずま注。当初は2ないし3学科で3学級が通常だったようだ。1学年定員120人で全学年が完成すると600人規模になる。) 第1期の国立12校に、昭和41年それぞれ1学科を増設。その後、第2期(昭和38年度)以降開設の地元県から、地域産業との関係を考慮して学科を選定して各高専に増設するよう申入れがなされる状況であった。文部省は2期校12校のうち、2学科3学級の6校のみ昭和42年に学科増設、残6校には翌43年に増設した。その後は順調に、44年度(3期校11校)、45年度(4期校7校)に学科増設。これで国立高専の学科増設は一巡して、ほぼ全校が1学年定員160人となった。 電波高専は昭和51から55年に学科改組や増設を行い、全校で3学科構成となる。 大学設置審議会における学科の拡充整備や改組の方向性の論議を受けて、国立高専では昭和50年代後半から、2巡目の学科増設が行われた。電子制御工学科10校、情報工学科9校、電子情報工学科7校など。 6 その他 高専卒業生の大学編入学問題と技術科学大学の新設、高校から高専への編入、高専の専攻科設置、独立法人化、名称問題(専科大学)など、興味深い事項がいくつもあるが、割愛します。 以上、設立や拡充期の概略をみてみた。次回は、いよいよ、東北の各国立高専について、自治体や地元産業界、立地地域の誘致活動などについて、個別に調べてみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.12.13 11:20:13
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