らーめん やまもと ~ラーメン版らくらくフォン~
五井という町もまだまだ奥深い。駅前を数百メートル入っただけで、昭和レトロの雰囲気がたっぷり満ちている。裏さびしい通りの一角で、人恋しそうな赤ちょうちんが風に揺れていた。近づいてみると、中からけっこう威勢の良い笑い声がしてくる。常連客なのだろう。引き戸をあける。中はほとんど満席に近かった。カウンターの端に行く。イスを引くとき角にあったファンヒーターに当たってしまい、警告音がピーピー鳴った。すぐにスイッチを押して黙らせる。カウンターのむこうの店主が「ありがとね」と声をかけてきた。(らーめん)と軒先でうたっているのだが、かなりのメニュー数があった。隣の人は刺身で一杯やっているし、その隣の人は穴子の天ぷらを横からかぶりついていた。来る客層から店はどんどん変容していって(各種ラーメンもできる)居酒屋・小料理屋になっているようだ。メニューの中にサンマー麺があった。神奈川地方でメジャーな(もやしあんかけラーメン)なのだが、千葉で見るのは珍しい。少し迷うが、今の気分ではなかった。普通のラーメンを注文する。4、5分でやってきた。チャーシュー・メンマ・鳴門・海苔・刻みネギが飾られている。まずはスープを一口。澄んでいてごくごくあっさりしている。麺はかなり細めのストレート系だった。このあっさりにぴったり合っている。メンマがコリコリしてうまい。子供の頃に食べた懐かしいラーメンを思い起こさせる。(人生なんて…)というフレーズが好きだ。どう生きていこうと、四方八方から現実の重々しい鎖が攻めてくる人生というステージに対して、ケセラセラ的にカジュアルに受け流そうとするその姿勢が心地よいではないか。真正面から受けとめるだけでなく、ときにはそういう視点も大事なのだ。その例にならって(ラーメンなんて…)というフレーズを、この一品に使いたくなった。多数の味、無数のトッピング、無限のバリエーション。何系、何々系、傍流系。水がどうで、背脂がどうで、加水率がどうで、どこどこ製麺で。いま夢中で取り上げられているラーメンと、このラーメンは、実はまったく別物なのかもしれない。それは例えば、老人向けシンプルフォンと通常の携帯が、ただの電話とコンピュータ末端付電話の明らかな違いがあるように。(ラーメンなんて…これでいいのだ。しょせんラーメンなのだから)一杯やったあとで食べたら、これはもっと甘露な味わいなのだろうと思った。「らーめん やまもと」住 所:市原市五井1524(旧地番)アクセス:五井西口駅前 理容プロペラの脇を入り少し先左側 P無電話番号:0436-22-5122営業時間:19:00-0:00(頃)定 休:日曜日/不定休/客 席:カウンター8/小上がり2卓/利用種別:個人向き/少人数向き/男性向き/メニュー:ラーメン600/チャーシュー麺900/サンマー麺900/タンメン800/ スタミナラーメン800/ちゃんぽん900/野菜カレーラーメン800/ 特製ラーメン900/特製やまもとラーメン900/ねぎラーメン800/ 炒飯700/野菜炒め700/ソース焼きそば700/中華丼800/ カレーライス800/ドライカレー800/刺身・揚物各種あり(値段表なし) 評 価:☆☆☆