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「20センチュリー・ウーマン」(原題:20th Century Women)は2016年公開のアメリカのヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。マイク・ミルズ監督、アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングら出演で、1970年代後半のカリフォルニアを舞台に、ミルズ監督自身の母親とそれをとりまく人々を半自伝的に描いています。第89回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた作品です。
20センチュリー・ウーマン」のDVD(楽天市場) 【キャスト・スタッフ】 監督:マイク・ミルズ 脚本:マイク・ミルズ 出演:アネット・ベニング(ドロシー・フィールズ、下宿の管理人、シングルマザー) グレタ・ガーウィグ(アビゲイル・ポーター、写真家、子宮頸がんを患う) エル・ファニング (ジュリー・ハムリン、ジェイミーの親友) ルーカス・ジェイド・ズマン(ジェイミー・フィールズ、15歳の高校生) ビリー・クラダップ(ウィリアム、大工、ヒッピーのコミュニティにも顔を出している) アリア・ショウカット(トリッシュ) ダレル・ブリット=ギブソン(ジュリアン) テア・ギル(アビーの母親) ローラ・ウィギンス(リネット・ウィンターズ) ナタリー・ラヴ(シンディ) ワリード・ズエイター(チャーリー) アリソン・エリオット (ジュリーの母親) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 1970年代後半のカリフォルニアを舞台に、アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングが演じる母や身近な女性たちと若かりしマイク・ミルズ監督との関係を、ユーモラスに、リアルに、そしてヴィヴィドに描いた、半自伝的なヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。 母や身近な女性たちと若かりしマイク・ミルズ監督との関係を描いた半自伝的作品 母やとりまく女性との関係を描いた半自伝的コメディ 私は1970年代後半のカリフォルニアに住んでいたわけでもないし、またアメリカ人の母親がいるわけでもないのですが、身近な人々をモデルに入念に書かれたマイク・ミルズ監督の脚本とアネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングらの卓越したパフォーマンスに、ミルズ監督の母親や当時の女性たちの息遣いが感じられるようです。母のドロシアを太陽とすれば、ちょっと凸凹のあるアビーやジュリーは太陽の周りを回る惑星で、原題の「20th Century Women」は1970年代後半のカルチャーを背景に描かれたそんな彼女たちの群像を意味しています。1925年生まれのドロシアはグレイテスト・ジェネレーション(1901~1926年生まれで大恐慌を経験、第二次世界大戦を戦い現代米国の基礎を築いた世代)で、本作は大恐慌や第二次世界大戦の経験そのものを描くものではありませんが、様々なエピソードを通してドロシアの人物像が描かれていきます。彼女の息子ジェイミーはジェネレーションX(1965~1980年生まれのMTV世代、共働きまたは離婚した親に育てられた鍵っ子で、懐疑的で孤立感と独立心を併せ持つ)で、ドロシアは戸惑いながらもアビゲイルやジュリーの助けを借りて世代のギャップを超えて繋がろうとする様子がユーモラスに描かれています。 身近な人々をモデルに独特の人間味と暖かさを醸し出す ゲイだと突然カミングアウトし人生を謳歌する75歳の父親と、その姿に戸惑う息子とフランス人女優のロマンスを、暖かな眼差しでユーモラスに描いた半自伝的な映画「人生はビギナーズ」(2010年)で、マイク・ミルズ監督は一躍有名になりました。「君とボクの虹色の世界」(2005年)で知られるパフォーマンスアーティスト、ミュージシャン、作家、女優、映画監督のミランダ・ジュライは彼の配偶者ですが、これら二作品のタイトルを聞いただけで、本作がどんな映画なのかわくわくします。「人生はビギナーズ」に少しだけ登場するエキセントリックな母親のモデルはミルズ監督自身の母親で、撮影の際にスタッフやキャストに彼女がどのような人だったか説明している時に、母をメインに据えた映画を作ろうと思い立ち、実現したのが本作です。「人生はビギナーズ」にはミルズ監督の父、母、グラフィック・デザイナー時代の監督自身、パートナー、飼い犬をモデルにしたキャラクターが登場しますが、本作の登場人物もミルズ監督の母、高校生の監督自身、姉、同級生の女の子たちをモデルにしており、パーソナルな雰囲気の中に、独特の人間味と暖かさを醸し出しています。 本作は僕自身の人生にインスパイアされているんだけど、僕は本当にとても強い母親に育てられたんだ。母は1925年生まれで、社会が押し付けた制約には縛られない女性だった。「フェミニズム」という言葉こそ使わなかったけど、フェミニストだったんだ。ショートヘアで、いつもパンツを履いていて、父よりも男らしかった。僕の父は隠していたけれどゲイだった。そして、僕には2人のとても強い姉がいた。だから、ジェンダーについて何か意見があるとしたら、僕の家ではすべてがとても流動的でフィックスされたポジションはなかったんだ。(ジェンダーは、)生まれ持ったわけではなく、後から位置付けられたようなもので、着脱できるマスクみたいなものというか、流動的なんだ。 独特の人間味と暖かさを醸し出すミルズ監督の脚本と演出は、俳優のパフォーマンスをフルに引き出します。「人生はビギナーズ」で父親役を演じたクリストファー・プラマーは第84回アカデミー賞で助演男優賞を受賞しましたが、本作のアネット・ベニングも存在感たっぷりに嬉々として演じており、第74回ゴールデン・グローブ主演女優賞にノミネートされてています。 強い女性に囲まれたミルズ監督 アネット・ベニング扮するドロシアは、実によくタバコを吸います。1970年代は、喫煙者の健康被害に加えて受動喫煙の危険性が認知されはじめた時期ですが、まだまだ喫煙者も多く、今となっては信じがたいのですが、自立した女性には煙草が似合うといったイメージが残っていた時代ではないかと思います。そう言えば、フランス人女優のメラニー・ロランがノーメイクで煙草を吸いながらインタービューを受けるビデオを見たミルズ監督が彼女に一目惚れ、脚本の設定を書き換えて「人生はビギナーズ」に彼女を起用したというエピソードを思い出しました。強い母と二人の強い姉に囲まれて育ったミルズ監督にとって、飾らず、隠さず、自然体で煙草を吸いながら話す女性は、自立し、解放された女性のイメージと重なるものであったのかもしれません。 ミルズ監督の配偶者のミランダ・ジュライは、「君とボクの虹色の世界」で知られるパフォーマンスアーティスト、ミュージシャン、作家、女優、映画監督ですが、彼女はフェミストでもあります。強い母、強い姉たちに囲まれて育ち、配偶者もフェミニストというミルズ監督の感性が興味深いところです。父と母それぞれをモデルに素晴らしい映画を制作したミルズ監督の次の作品は、配偶者であるミランダ・ジュライがモデルかもしれません。 アネット・ベニング(ドロシア・フィールズ、下宿の管理人、シングルマザー) アネット・ベニング(1958年〜)は、カンザス州出身のアメリカの女優。サンフランシスコ州立大学で学び、劇団に所属して舞台に立つ。1987年にブロードウェイの舞台でトニー賞にノミネートされ、1988年に映画デビュー。「グリフターズ/詐欺師たち」(1990年)で助演女優賞、「アメリカン・ビューティー」(1999年)、「華麗なる恋の舞台で」(2004年)、「キッズ・オールライト」(2010年)で主演女優賞と、アカデミー賞に4度ノミネートされている。1992年に「バグジー」で共演した俳優のウォーレン・ベイティと結婚、4人の子供がいる。 グレタ・ガーウィグ(アビゲイル・ポーター、写真家、子宮頸がんを患う) グレタ・セレスト・ガーウィグ(1983年〜)は、サクラメント出身のアメリカの女優、映画監督、脚本家。元々は脚本家志望であったが、在学中に端役でマンブルコア映画に出演したのがきっかけとなり、以降、マンブルコア映画運動で知名度を上げた。「フランシス・ハ」(2012年)、「ミストレス・アメリカ」(2015年)では出演と脚本をこなし、「レディ・バード」(2017年)では脚本と監督を務め、作品、監督、脚本など、アカデミ−賞5部門にノミネートされている。 エル・ファニング (ジュリー・ハムリン、ジェイミーの親友) エル・ファニング(1998年〜)は、ジョージア出身のアメリカの女優。姉は女優のダコタ・ファニング。2歳8か月の時に演劇を開始、「アイ・アム・サム」(2001年)に出演する。以降、数多くの映画にコンスタントに出演し、「SUPER8/スーパーエイト」(2008年)、「ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界」(2012年)、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2015年)などに出演している。 ルーカス・ジェイド・ズマン(ジェイミー・フィールズ、15歳の高校生) ルーカス・ジェイド・ズマン(2000年〜)は、シカゴ出身のアメリカの俳優。「フッテージ デス・スパイラル」(2015年)などに出演している。 ビリー・クラダップ(ウィリアム、大工、ヒッピーのコミュニティにも顔を出している) ビリー・クラダップ(1968年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの俳優。ノースカロライナ大学とニューヨーク大学で学び、1995年にブロードウェイ・デビュー、2007年にはトニー賞を受賞している。「あの頃ペニー・レインと」(2000年)、「プリズン・エクスペリメント」(2015年)、「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)、 「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」(2016年)などに出演している。 【サウンドトラック】 「20センチュリー・ウーマン」 のサウンドトラックCD(楽天市場)
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2018年04月04日 19時00分06秒
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