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カテゴリ:映画
「スリー・ビルボード」(原題: Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)は、2017年公開のアメリカ・イギリス合作のクライム・サスペンス&ドラマ映画です。マーティン・マクドナー監督・脚本、フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルら出演で、レイプ殺人事件で娘を失った母親の行動が田舎町に起こす波紋を描いています。第90回アカデミー賞で作品、主演女優、助演男優、脚本、作曲、編集の6部門で7つのノミネート(ウッディ・ハレルソンとサム・ロックウェルが助演男優賞に異例のWノミネート)を受け、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)と助演男優賞(サム・ロックウェル)を受賞した作品です。
「スリー・ビルボード」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:マーティン・マクドナー 脚本:マーティン・マクドナー 出演:フランシス・マクドーマンド(ミルドレッド・ヘイズ、レイプ殺人で娘を失った母親) ウディ・ハレルソン(ビル・ウィロビー、エビング警察署長、誠実で情け深く信望が厚い) サム・ロックウェル(ジェイソン・ディクソン、エビング警察の巡査、差別的で暴力的) アビー・コーニッシュ(アン・ウィロビー、ビルの聡明な妻) ジョン・ホークス(チャーリー、ミルドレッドの元夫、19歳の少女と交際) ピーター・ディンクレイジ(ジェームズ、ミルドレッドの友人、彼女に恋心を抱いてる) ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(レッド・ウェルビー、広告代理店の経営者) ケリー・コンドン(パメラ、レッドが経営する広告代理店の事務員) ダレル・ブリット=ギブソン(ジェローム、広告看板の制作者) ルーカス・ヘッジズ(ロビー・ヘイズ、ミルドレッドの息子、母のやり方に反発する) ジェリコ・イヴァネク(巡査部長、ウィロビーやディクソンの同僚) アマンダ・ウォーレン(デニス、ミルドレッドの友人、職場の同僚) キャスリン・ニュートン(アンジェラ・ヘイズ、ミルドレッドの娘、レイプ殺人の被害者) サマラ・ウィーヴィング(ペネロープ、チャーリーの現在の交際相手、19歳) クラーク・ピーターズ(アバークロンビー、ウィロビーの後任署長) サンディ・マーティン(ディクソンと同居する母、夫と死別、女手一つで息子を育てた) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 善悪の間の個性的なキャラクター群を強力な演技派俳優陣が演ずる、因果応報でも報復でもない、昇華できない人間の苦悩と行動を独特のトーンで描いた、類を見ない悲喜劇です。 監督・脚本のマーティン・マクドナーが、20年ほど前、アメリカ南部を移動している際に、バスの窓から見た野原に立つとある広告看板に触発されて制作された作品です。怒りに燃えた強烈なメッセージに、広告を出した人の痛みや怒りが強く心に残り、マクドナー監督の中で次第に膨らんでいきました。実際の広告看板に触発された話ではありますが、物語は必ずしも広告の背景となった実話の再現ではなく、マクドナー監督によるフィクションです。レイプ殺人で娘を失った悲劇的な母親の怒りをベースに、
善悪の間に広がる個性的なキャラクターの饗宴 本作の最大の見所は、フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルら演技派俳優が演じる、個性的で魅力的なキャラクター群です。理想的なヒーローや典型的な悪者はおらず、欠点を含めて個性が巧みに強調された人間臭いキャラクター群に、強力な演技派俳優陣ががっちりとキャスティングされています。 強力な演技派俳優陣
劇作家出身のマクドナー監督は俳優を活かすことを得意とし、本作の個性的なキャラクターであるミルドレッド、ジェイソンにそれぞれ、フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェルの出演を想定して脚本をアテ書きしています。最終的にこの二人がオスカーを受賞したことを考えれば、二人の実力もさることながら、マクドナー監督の脚本・演出が二人の魅力をフルに引き出していることがわかります。 また、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジェリコ・イヴァネク、アマンダ・ウォーレンは、マクドナー監督の前作「セブン・サイコパス」(2012年)にも出演しており、他にもマクドナーの舞台劇に出演したことがある俳優が起用されるなど、気心の知れたキャストが本作独特のトーンを作り上げています。一方で、ミルドレッドの前夫チャーリーの19歳の恋人ペネロープを演じるサマラ・ウィーヴィングは、出演時間は短いものの強烈なスパイスのように存在感を放ち、本作を引き締めています。 因果応報でも報復でもない、昇華できない苦悩を描いた人間臭い悲喜劇 レイプ殺人で娘を失った母親の怒りがベースの悲喜劇ですが、犯罪者が捕まらないという展開をベースに、因果応報でも報復でもない、昇華できない苦悩や人間臭い展開の繰り返しが特徴的です。 <ネタバレ>
余韻のある卓越したエンディング <ネタバレ>
実際、男を殺すのかどうか、曖昧にしたエンディングですが、因果応報でも報復でもない、昇華できない苦悩と人間臭い展開の繰り返しで本編が構成されていることを踏まえれば、単純に殺すことにはならず、一捻りも二捻りもある展開になるであろうことは想像に難くありません。続編があれば思わず観てみたくなるような、余韻のあるエンディングです。マクドナー監督が触発された広告の契機となった実際の事件が未解決であることを考えれば、実際の事件の現状とも符合する、素晴らしいエンディングです。 http://www.dailymail.co.uk/news/article-5316567/Real-life-murder-story-inspired-Three-Billboards-film.html <ネタバレ終わり> 余談:出演に消極的だったフランシス・マクドーマンド 本作でアカデミー主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドは、実は当初、本作のミルドレッド役に消極的でした。 脚本は素晴らしいし、ミルドレッドにも大きな魅力を感じた。でも、その時点で私は58歳だったの。つまり、38歳で娘を産んだことになる。社会的、経済的に彼女のような状態にある女性は、もっと若い時に最初の出産をしているはずだと思ったのよ。そのことについてマーティンに延々と話していたら、夫に『いいから、やりなよ』と言われたの。(フランシス・マクドーマンド)演じるキャラクターの環境や経歴などの背景を想定するのは演技の基本であり、フランシスの指摘は的を得たものです。確かに、リアリティが最優先されるドラマなら、彼女ではミスキャストになってしまったかもしれません。しかし、ある種の舞台劇のように戯画的なキャラクター表現を狙った本作では、リアリティよりも特徴的な演技がより重要になります。結果、見事にアカデミー主演女優賞を受賞したわけですが、本作の性格を象徴するようなエピソードです。 フランシス・マクドーマンド(ミルドレッド・ヘイズ、レイプ殺人で娘を失った母) フランシス・マクドーマンド(1957年〜)は、シカゴ出身のアメリカの女優。イリノイ州シカゴ出身。これまでにアカデミー賞、エミー賞、トニー賞を受賞、演劇の三冠王を達成している。大学で演劇を学んだ後、コーエン兄弟監督の「ブラッド・シンプル」(1984年)で映画デビューする。「ファーゴ」(1996年)、「スリー・ビルボード」(2017年)で、アカデミー主演女優賞を獲得したほか、同助演女優賞に三度ノミネートされている。夫は、コーエン兄弟の兄、ジョエル・コーエン。 ウディ・ハレルソン(ビル・ウィロビー、エビング警察署長、誠実で情け深く信望が厚い)ウディ・ハレルソン(1961年〜 )は、テキサス出身のアメリカの俳優。悪役やスキャンダラスな役を得意とし、危険な男だけでなく間抜けな男も演じられる。マフィアの雇われ殺し屋の父と、弁護士秘書の母の間に生まれ、殺人犯の父は服役中に死去。弟のブレット・ハレルソンも俳優。大学卒業後、ニューヨークで演技を学び、舞台デビュー。テレビ・シリーズ「チアーズ」でお茶の間の人気を獲得、映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(1994年)で頭角を現す。「ラリー・フリント」(1996年)で実在のポルノ雑誌編集者を演じてアカデミー主演男優賞にノミネート、「メッセンジャー」(2009年)、「スリー・ビルボード」(2017年)で同助演男優賞にノミネートされている。大麻合法化活動家として有名で、数々の問題行動を起こすことでも知られている。
サム・ロックウェル(ジェイソン・ディクソン、エビング警察の巡査、差別的で暴力的) サム・ロックウェル(1968年〜)は、カリフォルニア州出身のアメリカの俳優。10歳の時に母親が主演する即興コメディで初舞台を踏む。1989年に低予算ホラーで映画デビュー、「シン・レッド・ライン」(1998年)、「グリーンマイル」(1999年)、「ギャラクシー・クエスト」(1999年)、「マッチスティック・メン」(2003年)、「フロスト×ニクソン」(2008年)、「月に囚われた男」(2009年)、「セブン・サイコパス」(2012年)、「プールサイド・デイズ」(2013年)などに出演、本作でアカデミー助演男優賞を受賞している。 アビー・コーニッシュ(左、アン・ウィロビー、ビルの聡明な妻) アビー・コーニッシュ(1982年〜)は、ニューサウスウェールズ州出身のオーストラリアの女優。13歳からモデルとしてキャリアを始め、テレビドラマや映画に出演するようになる。「15歳のダイアリー」(2004年)、「ブライト・スター いちばん美しい恋の詩」(2009年)、「セブン・サイコパス」(2012年)などに出演している。 ジョン・ホークス(チャーリー、ミルドレッドの元夫、19歳の少女と交際) ジョン・ホークス(1959年〜)は、ミネソタ州出身のアメリカの俳優。「君とボクの虹色の世界」(2005年)、「アメリカン・ギャングスター」(2007年)、「ウィンターズ・ボーン」(2010年)、「Higher Ground CW」(2011年)、「マーサ、あるいはマーシー・メイ」(2011年) 、「コンテイジョン」(2011年)、「セッションズ」(2012年)、「リンカーン」(2012年)などに出演している。「ウィンターズ・ボーン」では、アカデミー助演男優賞にノミネートされている。 ピーター・ディンクレイジ(ジェームズ、ミルドレッドの友人、彼女に恋心を抱いてる) ピーター・ディンクレイジ(1969年〜)は、ニュージャージー州出身のアメリカの俳優。軟骨発育不全による小人症で、身長132cm。小さな体を生かし、「エルフ 〜サンタの国からやってきた〜」(2003年)、「ステーション・エージェント」(2003年)、「名犬ラッシー」(2005年)、「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年)、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。 ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(レッド・ウェルビー、広告代理店の経営者) ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(1989年〜)は、テキサス出身のアメリカの俳優、ミュージシャン。17歳の頃、「ノーカントリー」(2007年)で映画デビュー、「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)、「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年)、「神様なんかくそくらえ」(2014年)、「ゲット・アウト」(2017年)、「バリー・シール/アメリカをはめた男」(2017年)などに出演している。ちょっとアブナイ感じの役を演ずることが多い。映画の出演が増えた為、ミュージシャンとしての活動は休止している。 ルーカス・ヘッジズ(ロビー・ヘイズ、ミルドレッドの息子、母のやり方に反発する) ルーカス・ヘッジズ(1996年〜)は、ニューヨーク、ブルックリン出身のアメリカの俳優。母は詩人・女優のスーザン・ブルース、父は脚本家・監督のピーター・ヘッジス。中学の時に演じた演劇が、「ムーンライズ・キングダム」(2012年)のキャスティング・ディレクターの目にとまり、出演する。以降、「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年)、「レディ・バード}(2017年)などに出演している。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。 ジェリコ・イヴァネク(左、巡査部長、ウィロビーやディクソンの同僚) ジェリコ・イヴァネク(1957年〜)は、ユーゴスラビア(現スロベニア)出身のアメリカの俳優。「戦火の勇気」(1996年)、「フェイク」(1997年)、「クライシス・オブ・アメリカ」(2004年)、「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」(2006年)、「ダイ・ハード4.0」(2007年)、「ヒットマンズ・レクイエム」(2008年)、「アルゴ」(2012年)、「セブン・サイコパス」(2012年)などに出演している。 アマンダ・ウォーレン(デニス、ミルドレッドの友人、職場の同僚) アマンダ・ウォーレン(1982年〜)は、オレゴン州出身のアメリカの俳優。テレビ・シリーズや映画の女優として知られる。「セブン・サイコパス」(2012年)に出演している。 キャスリン・ニュートン(アンジェラ・ヘイズ、ミルドレッドの娘、レイプ殺人の被害者) キャスリン・ニュートン(1997年〜)は、カリフォルニア州出身のアメリカの女優。4歳のころから活動、さまざな雑誌の表紙を飾る。「ブロッカーズ」(2018年)などに出演している。 サマラ・ウィーヴィング(ペネロープ、チャーリーの現在の交際相手、19歳) サマラ・ウィーヴィング(1992年〜)は、アデレード出身のオーストラリアの女優。「Z Inc. ゼット・インク」(2018年)などに出演している。 【サウンドトラック】 「スリー・ビルボード」のサウンドトラックCD(楽天市場)
【撮影地(グーグルマップ)】
【関連作品】 マーティン・マクドナー監督xウディ・ハレルソンxサム・ロックウェルのコラボ作品(楽天市場) 「セブン・サイコパス」(2012年) マーティン・マクドナー監督・脚本作品のDVD(楽天市場) 「ヒットマンズ・レクイエム」(2008年):輸入版、日本語なし フランシス・マクドーマンド出演作品のDVD(楽天市場) 「ブラッド・シンプル」(1984年) 「赤ちゃん泥棒」(1987年) 「ダークマン」(1990年) 「ショート・カッツ」(1994年) 「ファーゴ」(1996年) 「あの頃ペニー・レインと」(2000年) 「ワンダー・ボーイズ」(2000年) 「バーバー」(2001年) 「ムーンライズ・キングダム」(2012年) 「ヘイル、シーザー! 」(2016年) ウディ・ハレルソンxサム・ロックウェル共演作品のDVD(楽天市場) 「シン・レッド・ライン」(1998年) ウディ・ハレルソン出演作品のDVD(楽天市場) 「ラリー・フリント」(1996年) 「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」(1997年) 「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年) 「ノーカントリー」(2007年) 「南京」(2007年) 「暴走特急 シベリアン・エクスプレス」(2008年) 「メッセンジャー」(2009年) 「ゾンビランド」(2009年) 「ハンガー・ゲーム」(2012年) 「ハンガー・ゲーム2」(2013年) 「スウィート17モンスター」(2016年) 「猿の惑星: 聖戦記」(2017年) サム・ロックウェル出演作品のDVD(楽天市場) 「グリーンマイル」(1999年) 「ギャラクシー・クエスト」(1999年) 「マッチスティック・メン」(2003年) 「フロスト×ニクソン」(2008年) 「月に囚われた男」(2009年) 「プールサイド・デイズ」(2013年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018年08月18日 05時00分08秒
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