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カテゴリ:ショートストーリー
「満ち足りた幸せ」ってなんなんだろう?と、
いつものカフェでいつもの席でいつものカフェモカを飲みながら、 明日のクライアントへ提出する資料をつくるのにぽちぽちとPCをうっていた。 一枚終わっては、お茶を一口、自分へのごほうびというか、 目の前にぶらさげた人参というか、まあそうでもして奮い立たせないと いつまでたっても仕上がらなさそうな窮屈な書類だった。 次の一口(ごほうび)の部分でふと視線が気になった。 右斜め45度の角度に、見知らぬ男発見、 推定年齢32歳 レジメのネクタイを品よくしめ、 PCは私と同じ機種。 どこかでみたことあるような、ええとK社のクライアントだったかな。 目が合う・・・・一瞬の視線の交差のうち、それは離れて宙を舞う 「あー、なにやってんだろ私、これじゃ欲求不満みたいじゃない、 なんか恥ずかしい。あーもー仕事はもうやめやめ。」 でかい声の独り言、彼にきこえちゃったかな? モバイルPCをカバンに放り込み店を出た、 振り返ると気持ちのいいほほえみ加減でこちらを見ている。 お、思い出せない。。。。ごめん。 彼は次の日もそのまた次の日も、居た。 私も行かなきゃいいものを、見なきゃいいものを 小さい頃からクールに徹することが出来ず、 好奇心旺盛のやんちゃは未だ健在だったから。 たまに資料用紙の隙間から覗くとすごく真剣そうに難しそうな本 を読んでいる、たまに優雅にPCを操ってるときもある。 そんな日々が一週間続いた。 毎日あそこにいけば彼に逢えるという安心感は 出口の無い締め切りにおわれる私の心を癒すようになっていった。 いつもの時間に店に入る、注意深く、でもさりげなく 店内を見渡すと彼の姿がない。 とりあえず、いつものヤツをオーダし、彼がいつもいる席に着いてみた。 今日はこないのかなー。。。。 少し、いや結構がっくり。とたんにやる気もうせる。 30分後 息を切らしながらカフェの玄関でつまづいた彼を発見した。 まず体制を建て直し、私がいつも座っている方を見て いないこと(誰を?)を確認しホッとした顔 にこにこして入ってきたら、いつもの席に私がいた・・・というわけ。 わかりやすいリアクションに笑ってしまう、 なんだかとてもあたたかでおかしくて、ふんわりした笑顔の彼の姿 の愛らしさに。 「あのー、以前どこかで御逢いしてますよね?」 あらー、すんなり言える、なんでだろう? 彼は「そうですね?」とちょっとびっくり、でも優しい笑顔で答えてくれた。 今恋をするならこんな始まり方も悪くない、 恋がうまれる前でも訪れる、やさしい時間と満ち足りたシアワセ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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