1484041 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Freepage List

Profile

Okum

Okum

Calendar

Jan 18, 2006
XML
カテゴリ:Okumura's Artwork

先日土曜、無事に大阪の個展は
オープンしました。レセプショ
ンに来ていただいたみなさま、
ありがとうございましたm(_ _)m。

僕としては納得のいく展覧会に
なったと思います。あとは来週の
土曜までの会期中にできるだけ
多くの人々に見ていただいて、
何かしらの反応がいただけること
を願っております。

で、ほんとはもっといろいろ書き
たいんだけど、やることがありす
ぎてなかなか書けないので、いま
大阪で展示している映像に関して
僕が11月に書いた日記(mixiのみ
で公開したもの)をここに再録し
ちゃいます。微妙にネタバレもあ
るので、大阪の個展にいらっしゃ
る予定の方は読まないほうがいい
かも。

ちなみに、この事件の後、大阪で
無事別の車で撮影に成功しました。
ひとんちのガレージの中に侵入して
撮ったんだけどね。。。

まーとにかく、ひとまず。
==============================



「サバイバー」 2005年11月14日


1月に大阪で個展があるんだけど、いちおうそれを目指して、いまつくってる映像がある。口で言うとかなりショボいんだけど、ゴルフボールと穴をモチーフにした作品で、ゴルフ場でカップに入ったボールが、時空を越えていろんな場所を通り過ぎ、ぜんぜん関係ない穴から飛び出て来る感じ(あー、言っちゃった)。たとえば家の外壁を伝ってる、雨水を逃がすための排水口の口から出て来たり、鉄パイプの空洞から出て来たり、樹に開いた穴から出て来たり、車の排気口から出て来たりする。で、今日は、家から芸大目指して歩き、所々でこの作品のためのいろいろなカットを撮影していった(注:この構想は後に若干マイナーチェンジ。いま展示してる映像はこの説明とはちょっと違います。もっと良いです。奥村 2006/1/18)。

で、芸大に到着。美術棟で少し撮影したあと、音楽棟へ(そこできよしさんとすれ違う)。いま工事してる赤レンガの裏のほうを歩いてると、ちょうどあまり人がいないところ(人がいるところで撮影するのは恥ずかしいから嫌い。って自意識過剰だが)に車(ジェミニ)が駐車してあった。上で書いたように、「車の排気口からゴルフボールが出て来るところ」を撮影しようと思った僕。

で、ポケットからゴルフボールをとりだし、排気口に入れてみた。なにも考えず、すぽーんと。



...って、出てこねーよ!!!!!


その排気口は水平ではなく、奥に向かって下がっていたのだ(って普通かな?)。ボールを入れる前にじっくり上下左右から見ればわかることなのだが、せっかちな僕はふつうにすぽーんと。これがちょうどよく排気口の大きさにフィットしてまして、するーっとはまりこんだのです。

指を入れてみたがぜんぜんボールに触れられない。穴を覗き込んでも暗くてわからない。ボールはだいぶ先に、しかも斜め下に下がった部分にはまりこんでいるようだ。

時間は4時。この持ち主は生徒か先生か職員か知らないが、おそらく5時前後には出車するはずだ。もしこのまま放っておけば、きっとボールがはまっているせいで排気ガスが外に出られず、内部にたまり、急速に圧力が高まり、やがては爆発するのでわーーー!!???もし僕がこのままトンズラこけば、何も知らない運転手さんは車を走らせ、「うーんどうも後ろのほうが唸ってるなあ」とか言いながら、途中でいきなり爆発し、運転手さんは助かるものの後続車の人は爆発に巻きこまれて死亡!もしくは大やけど!そしてニュースに「ゴルフボールが原因で車爆発」!そして模倣犯が大発生!!!やがて、ゴルフボールを使った作品を作っている元芸大生が割り出され、逮捕。彼はNYに行く予定だったがもちろんそれもポシャる。元担当教授は責任を痛感し辞職。犯人は美術作家としての未来を断たれる。

…と、ここまで僕の妄想は膨らみました(元来考えすぎる性格であります)。

とりあえずその場にある枝や棒でボールを出そうと試みるも、ぜんぜんだめ。もちろんトンズラしようという悪魔のささやきは聞こえたさ。もう少しでそっちに行きそうになったさ。

が、とりあえずやれることはやろうと思い(といってもこの時点で、最悪の場合トンズラすることももちろん可能性に入っている)、家に速攻で戻って秘密兵器を持って来た。こないだの風船作品「トランスファー」の撮影当初、風船をどうやって割ろうかなと考えてるとき、候補としてダーツの矢(←実際使ったのはこれ)ともうひとつ、透明なアクリルの棒の先に透明な画鋲を接着剤で取り付けたものがあった。ヤリみたいなもんやね。それがまだ残ってたので、これを排気口に突っ込んでボールに突き刺し、そのまま取り出すことを考えたのだ。

(よくよく考えたら、僕が家に戻ってる間にこの車が発車する可能性もあったのだが。もしそうなってたらどうなってたか...)

さっそく排気口に突っ込み、ボールの感触を確認。ブスリと刺さった感触もアリ。が、いかんせん画鋲がヤワすぎる。何度取り出そうとしても途中で抜けてしまう。くそう。おりゃー!!

って、あ、画鋲がアクリル棒の先端から取れちゃった!ってか画鋲まで排気口の奥に入っちゃった!棒だけ出て来た。



あは。


かなり高鳴る心臓。僕はこのまま犯罪者になるのか?正直に告白して賠償するのか?いずれにせよ「人の車に勝手になにやってんだ」ってことになるよねもちろん。「奥村ばかじゃない?」と言うカ○グチさんの顔が、「すべて終わりだ」と語るACCのジ○ージさんの顔が浮かぶ。僕は前科者になるのだろうか。それともゴルフボールひとつで人を殺し、そのまま何十年も雲隠れして生きていくのだろうか。


いや、とりあえずやれるだけのことはやろう。もっと頑丈な針状の物体が必要だ。キリを買おう!美術棟に走り込み、画材屋と生協を物色するも、使えそうな長めのキリがない。しかたなく生協でドライバーセットを買い、その中の短いキリを使うことにする。このキリを棒にくくりつけるために針金とガムテも購入。生協のおばちゃんの「袋に入れますか?」という普通の言葉が胸にささる。おばちゃん、僕は本当は凶悪な犯罪者なんだよ。こうして普通を装ってるけど、まるで「制作に使います」ってな顔をしてるけど、自分の犯罪をもみ消すために買ってるんだよ。許してくれ、おばちゃん…。

などと物語に入り込んだ思考を展開しつつ、音楽棟にリターン。遠くから見ると、一瞬あの車が無くなってるように見えた。うそ?…いやいや、よくよく見るとまだ車はある。よし。残された時間は少ないぞ。タイムリミットまであと15分。チク、タク、チク、タク。

さきほどのアクリル棒はいらついてどこかに投げてしまい(おい)、行方不明になったので、使えそうな枝を拾う。そしてキリを先端に装着。ガムテでぐるぐるに。と、僕が座ってた段差の後ろのドアがギィッと開いた。



なんか先生っぽいおじさん出て来たーー!!



しかも例の車に向かう。まじか?奥村、ついに告白するのか?

…って、車の横を通り過ぎて行った。ふう、間一髪。あのおじさん、まさかこの車の排気口にゴルフボールが信じられないくらい綺麗にはまりこんでるとは思いもよらなかろう。


よし、機は熟した。これが最後のチャンスだ。奥村雄樹、一世一代の決戦じゃあ。

排気口に突っ込み、ぶすぶすしてみる。まっすぐ刺しても感触はないが、少し下に角度をつけるとゴルフボールの堅めのゴムのような感触が。なかなかうまいこと刺せないが、何度かやってみる。お、刺さった!よし、棒を手前にひっぱろう。コロコロコロ…、途中までボールが来た!お、姿が見えた!

が、棒を引き抜いた瞬間、ふたたびボールは中へ転がり落ちた。でも画鋲だけはその拍子に飛び出して来た。

何はともあれ、この道具を使って取り出すことが不可能ではないことだけは確認。このことに僕は勇気と希望をもらう。その後10分ほど格闘。そして、お、かいしんの一撃!ぶすりと刺さった。そこからゆっくり棒を引っ張りだす。ただ水平にやってもだめだ。途中でボールがひっかかって落ちてしまうだろう。少しななめ上に方向をつけながら、ゆっくりゆっくり取り出すのだ。

きた、きた、きた...まだはずれてない...その調子だ。



コロコロ~~ン!!!


出たーーーーーーーー。
出たよ。おいらやったよ。おいら、悪魔の道の一歩手前でふんばったよ。おいら人間の側に踏みとどまったよ。人間だよ!
アイ・メイド・イット!!!!

黒いすすにまみれて汚れたゴルフボールを高々と投げ、遠くにどすんと落ちるのを見届け、僕を救ってくれた即席ヤリを地面にぐさりと突き刺し、僕は勝利の雄叫びをあげたのだった。「やったぜコンチクショーーーー!!」


体にまとわりついたいやな汗が風に吹かれて冷えていくのを感じながら、僕は自転車を走らせた。あのジェミニの持ち主は、こんな激動の事態が自分の車に起きていたことを知る由もないだろう。きっとあと少ししたらいつもどおりエンジンをかけて、カーナビのスイッチを入れ、好きな音楽を聞きながら、家路に向かうのだろう。彼/彼女は一生この事件を知ることはないのだ。


これが、僕が人間界から半歩抜け出し、悪魔の世界に誘惑され、その風景を垣間見ながらも、サバイバル技術とあきらめない心(笑)、そして持ち主にバレたくないというセコくて情けない根性を駆使し、ついに帰還した全顛末だ。ボールが入ってから出てくるまで約1時間。しかしそれは、僕にとっては2時間にも3時間にも感じられた。頑張ったご褒美として上野のマックで照り焼きマックバーガーセットを買い(って子供かよ)、ひさびさにコーラを飲みながら、しみじみと人生について考えを巡らせた。
そう、ライフ・ゴーズ・オン。


あー憑かれた。ってか疲れた。

(了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 19, 2006 01:19:51 AM
コメント(8) | コメントを書く


Keyword Search

▼キーワード検索

Category

Archives

・May , 2024
・Apr , 2024
・Mar , 2024
・Feb , 2024
・Jan , 2024

© Rakuten Group, Inc.