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カテゴリ:DVD・書籍
この話の発端は、野槌の弥平一味の残党、小川や梅吉を、密偵の岩五郎が本所あたりでみかけたところから始まる。岩五郎は佐嶋忠介の密偵だ。
本所は言わずと知れた、平蔵の若き日の住み暮らした町だ。本所三ツ目に屋敷があったそうな。 ここに法恩寺という古寺があり、その近くに平蔵が修行をした高杉道場があった。この道場の隣に、山村の桜屋敷と呼ばれた家があった。ここにおふさという当主の孫娘がいた。「むき卵のような」初々しい女性が、稽古を終えた平蔵ら門下生に、蕎麦切り等の差し入れを持ってくる。平蔵の同門であり親友の岸井左馬之助がこのおふさに惚れた。平蔵も惚れた。二人して惚れたもんだから、抜け駆けをせぬという協定を結ぶ。このあたりが、若いなあ、と思う。なんかこうしたことも中学生や高校生の頃には誰にもあったように思える。池波先生もこういうことがあったんだろう。たまさか話に出てくるエピソードだ。 またこの話には、平蔵の生い立ちが結構細かく書かれている。連載し始めの頃ゆえに、主人公の紹介の意味もこめて、左馬之助、おふさ、高杉道場との関わりがよくわかる内容になっている。 このおふさ、今は服部角之助という百俵取りの御家人の奥さんに収まっている。ところが、この服部が曲者だった。 おふさは最初、日本橋本町の近江屋清兵衛方に嫁入りしたのだが、旦那が若死にしてしまい、挙句の果て、近江屋かた追い出されてしまう。そして、どういういきさつか服部に嫁いだ。 この話の中で、初めて相模の彦十が登場する! 彦十は服部のところの若い衆と喧嘩をしているところを平蔵に助けられるのだ。彦十はこのとき、平蔵が火付盗賊改方の長官だとは知らない。 この服部の屋敷に小川や梅吉が入っていくのを目撃されているのだ。 その後、彦十は小川やの手下に声をかけられるなどして、リンチされたりするのだが、ここにどうもおふさが絡んでいるようだった。 狙った家はどこか? おふさの最初の嫁入りをした近江屋だった。 しかけを施して盗人どもを待つ平蔵たち。その網にまんまとはまる盗人。その中におふさ。 岸井左馬之助は信じない。おふさが盗賊に成り下がったなどとは信じたくもない。DVD版では、怒鳴り散らす左馬之助に平蔵が、お白洲を見させる。小説では、平蔵と見ているのだが、DVDでは平蔵が取調べをしている。 おふさは平蔵を見知っているはずなのだが、忘れてしまったような態度で取調べを受ける。 引き立てられる際に、たまりかねて左馬之助が飛び出すが、おふさはこれにも動じず、「誰だ?」という顔で引き立てられていくのだった。 「女という生きものは、過去もなく、将来もなく、ただひとつ、現在のわが身があるのみ…、とういことをおれたちは忘れていたようだ」 平蔵の一言に左馬之助は涙ながらにうなずく。 この話のエンディングは小説と同じ、舟の中の平蔵のシーンだ。切ない終わり方ですが、ぐぐっときます。この話がテレビ第2話で使ったのは実によかったと思う。確実に平蔵という人となりを見ているものに伝えられたからだ。 そしてだんだん登場人物も増えてくるのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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