カテゴリ:短歌
辺見じゅん選の入選と佳作から、私の注目した歌にコメント。 園児らのちぎり絵壁に飾られてどの絵にもいびつなお日さまがある園児の絵にはいつも太陽がある。本当に太陽が好きなのか、それとも先生か誰かに描かされているのかよくわからないが、子供の明るさや元気溌剌さを感じさせる。千切り絵だから太陽もいびつな形になるのだが、その型にはまらない感じがまた園児の生命の個性的な働きを想像させる。 他愛なき花占いに千切りしは蓮華たんぽぽ 愁いなき日に今はもう本当に愁いのある恋をしっかり体験しているというわけだろうね。(^^ゞ ふたたびの悪夢は避けむ 月澄みて回天基地はとはの静寂私としては、この現代に回天のような特攻作戦は軍事的に有効ではないし、やらないだろうと思っているので、こういう反戦は時代錯誤という感じがする。だが、後半の静寂は、故人たちの歴史性をしのばせて、なかなかいいと思う。 闇の中千切れるほどに手を引かれ母と走った爆音の下素朴な体験的記憶。この状況、すなわち制空権を奪われることこそ、我々が徹底して防がなければならないことである。非武装平和は、残念ながら夢物語だ。 駅前でもらうキャバクラ求人を千切るあなたに守られている男のほうは特に何も考えないでビリッと破くのだが、その迷いのなさは女性にとっては救いにもなるのだろう。「ダメなものはダメ」という問答無用の男性性はある程度必要である。「相手の気持ちを大切にして・・・」とばかり言っていると、心の弱い人間――それはじつに多くの人々に当てはまる――は、自己責任という甘美な無責任のなかでその存在が台無しにされていく。 母悲し 餅を千切りて渡しても大きな方を食べたいと言うひょっとして痴呆の母じゃないかな。子としては喉につまらせないようにと心配して餅を千切っているのだが、母のほうは子供がえりして欲だけが前面に出ている。泣き出していたりするんだろうね。 千切れ雲幾重かさねて天国の母かえりませ 彼岸会近し千切れ雲が幾重にもかさなり階段のようになって天と地を結ぶというイメージか。彼岸会は仏教的行事で、天国のイメージとは違うのだが、作者の心の中では母は天にいるという感じがしているのだろう。 《『NHK短歌』のホームページ》 人気blogランキング ↑この記事が面白かった方、またはこのブログを応援してくれる方は、是非こちらをクリックしてください。 「p(^o^) 和の空間」の Window Shopping |
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