高校、大学とラグビーをやっていた。
夏の今の時期は必ず長野の菅平で合宿であった。
高校1年の初めての菅平合宿のことである。
「ダボスの丘」というところに連れて行かれた。
要は夏のスキー場である。草の生えた斜面をひたすら登る。
頂上に到着。すると、上級生が麓に向けてボールを蹴る。
ひたすら斜面を転がっていくボール。ものすごい勢いだ。
唖然として見ていると、上級生が一言。
『1年獲って来いっ!』
『一番最初にボールを持ってあがって来たヤツからこの練習終了だ!』
斜面を不規則に転がり落ちる楕円のボールを追いかける一年生の集団。
まるで逃げ惑う一頭の子羊を追いかける狼のような集団だ。
途中で転ぶヤツ、追うのを諦めてボール持って上がってくるヤツを中腹で待ち伏せして狙うヤツまで出る始末。
もう仲間なんて関係ない。同期の愛、信頼関係など吹っ飛び、獲るか獲られるかの弱肉強食の世界。
結局自分は最後の方でボールを獲れた。阿鼻叫喚の地獄絵である。
この練習というか、しごきはうちの高校に代々伝わるものらしい。
こんなアホなことやってるのはうちの高校だけに違いない。そう思いながら2年生になっても同じことを続けたのであった。
大学へ進学後、よせばいいのにまたラグビー部に入ってしまった。我ながらアホである。
そしてまた来てしまった。菅平。
そしてまたまた来てしまったダボスの頂上。
上級生は麓に向けてボールを蹴った。そして一言。
『1年獲って来いっ!』
歴史は繰り返すのである。
周りをよく見たらどこの学校も同じことをやっていた。
さらに斜面でスクラムを組むという新たなオプションが加わっていた。
さすが大学生は考えることが違う。(涙)斜面の下側になるチームは地獄である。
スキー場は冬に行くところ。夏に行くところではない。と悟ったのであった。
うちの学校はまだマシで、本当の麓の30キロ離れた駅の駅員さんのサインを走ってもらってくる。なんてしごきやら、走りすぎて過労死。なんてチームもあったらしい。
夏のスキー場はホントに恐ろしい・・・