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カテゴリ:染屋の独り言
本紅で染めたと言う「紅絹」は虹の様に色が変化します。
本来の色は緋色という赤でも少し青味の鮮やかな色ですが、 少し深みもあります。 光の加減によって黄味やオレンジ味が見えてきます。 手にすると思っていたより質感がありました。 匂いを嗅いでみましたが無臭。 横浜のお客様からの依頼で手にしました。 そのお客様の意向で一疋を三等分しましたがその時に一センチ程頂きました。 今回はそれを色落ちテストする事に。 現実の事故に近づける為、丹後縮緬の白生地に挟んでテストしました。 水に浸けて検査する時間を「10分」「30分」「1時間」「2時間」に分けています。 上下から紅絹を白生地で挟んで水を垂らしました。 もう一つ比較する為に工房で染めている振袖の生地も同じ条件でテストしました。 生地は濱縮緬、南久さんの「雲影」。 写真では焦茶の様に写っていますが、実際は深みの臙脂色。 振袖の地色になる一番深みの赤い色と考えて下さい。 染付く以上の染料を打ち込んで染めますから、 染め上がった時には生地の表面が結晶して銀張ってしまう程。 地色を染めた時に「しめり蒸し」を含んで三回、彩色友禅をして二回、計五回の「蒸し」 そして二回の水元(友禅流し)で色を剥いでいます。 これが結果です。 10分では振袖の方では全く色落ちがありませんが、紅絹ではうっすらとピンク色が見えます。 30分になると振袖の方にも色落ちが確認出来ますが、紅絹の方ははっきり出ています。 ところが一時間、二時間となるとどちらも変わらぬ位になりました。 生地の濃度自体は振袖の方が倍以上濃いと思いますから、矢張り紅絹は色が落ち易いと言うのは本物の様です。 しかし昔の紅絹は凄まじい色落ちをしたと言います。 水に濡らしただけで即、ピンクの水が滴り落ちたとか。 何はともあれ、改良はされた様です。 着物に染まっている染料は化学的に生地と化合して接着している訳です。 しかし、高温の水に触れると又化学反応を起こして生地と分離します。 つまり、水に浸けた場合、水の温度が高ければ高い程色落ちが激しくなるという事です。 着物の染は足し算しか出来ません。 染めれば染めるほど色が濃くなって黒に近づいていきます。 しかし、高温で染める「浸け染め」では染まった色を剥いで新たな色を染める事が可能になります。 「浸け初め」では黄色に染まった生地に青色を掛ければ緑になる所を、青緑に振る事が出来るのです。 可成り技術が要りますが。 色が落ちるとはこう云う事もあるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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