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染屋の独り言

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2011年07月29日
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着物の染には仕上げの工程でどうしても世話になる工房があります。
生地に付いた染料を定着させる工程である蒸しを主な仕事にする「蒸し屋」さんと生地の巾を出したり揃える「湯伸し屋」さんです。

湯伸し屋さんは蒸し屋さんが兼業している場合もあり、比較的小規模で商いされています。
ところが蒸し屋さんは沢山の工程をこなす為、それぞれの機械や作業場を必要としています。
ゴムや蝋を落とす揮発水洗の機械、余分な染料や防染の為の糊を落とす水元の機械と川、蒸しをする着物の生地を沢山入れる大きな箱、自然乾燥させる大きな干場など。
その為蒸し屋さんは大きな設備投資が必要な為、大きな土地と資金が必要な工場となっています。

近年、着物不況は深刻さを増し、耐えきれなくなった蒸し屋さんの数は年々減っていました。
残った数少ない蒸し屋さんも毎年続く赤字にも拘らず営業を続けていたのです。

蒸し屋さんにも大きな声では言えませんが暗黙の内にランク付けがありました。
トップの一軒を除いてはドングリの背比べに近いのですが。
そのトップである「辻本」さんがこの八月一杯で廃業する事が決まったのです。
その話は内緒で一年程前に聞きつけていたのですが、誰も信じませんでした。

京都の染で高級な物を染めている染屋さんは大方この「辻本」さんに蒸しを依頼していました。
腕も良いけど工賃も高く我が工房とは取引がありませんでしたが、親父の頃は同じ染の同人として仲が良かったそうです。
京都の蒸し屋仲間の間では常にリーダーシップを取り続け、別格扱いされていたのです。

そんな蒸し屋さん廃業ですから、良い物を扱う染屋さんに取っては寝耳に水の大ショック。
代わりをする蒸し屋さんが居ないと嘆く事しきり。

しかし、他の蒸し屋さんも後追い心中する可能性が無いとも言えないのが実情。
大きな設備を保持していくのは至難の技。
潤沢な資金が裏打ちされないと舞っていかないのです。
我が工房の依頼先の蒸し屋さんは「染の地図が変りそう」と言っていました。
続けられる赤字の年数は限られています。
震災以来のどん底不況が本当に地図を塗り替えそうになってきました。

我が工房はお客様の支援があり、着物だけでなく小物にも色んな形で注文が来ています。
しかし、問屋筋からは仕事が消滅、初めての経験をしています。
今こそ心細やかな工夫が必要だと思います。

さあ、智慧を出し合って勇気を持って立ち向かいましょう。





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最終更新日  2011年07月29日 22時25分27秒
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