テーマ:本のある暮らし(3215)
カテゴリ:小説
こんなに気持ち悪くて怖くておもしろい本、初めて読みました。
ていうか、この種の気持ち悪さや怖さって、ちょっと他にないでしょう。 とにかく読み心地がすごい本でした。 別に残酷なことが起こるわけでもないし、犯罪もない。 未来の普通の人々が、たぶん普通の生き方をしているだけ。 それが何とも気持ち悪いんです。 一部ネタバレしますから、ご注意ください。 でも、ネタバレしても、この本はおもしろいと思いますよ。 未来のお話です。 人間は感染すると不老不死になるというウイルスを発見します。 そのおかげで、ほとんどの人々が不老不死の処置を受けて、 人が死なない世の中を作りました。 当然みんな、体力も外見も最高である20代のうちにその処置を受けますから、 世の中の人がみんな20代の外見を持つようになってしまいます。 これだけでも相当気持ち悪いと思いませんか。 不老不死が現実になると、いいことみたいな気がしますが、 よく考えてみると、いろんな矛盾が出てきます。 80歳になっても90歳になっても生殖能力がありますから、 何度でも子どもを作ることができます。 子どもも成長したら処置を受けて不老不死となるわけですから、 家族制度というものは壊れます。 ある程度の年になれば、親がどうなったか知らない。 自分の子供がどこで何をしているかも知らない。 それからおもしろいことに、外見がみんな若くて平等だと、 精神が成熟しにくい。成熟しないのに、老化はしていく。 20代の外見でも、年を経るとなんらかの変化がでてくる。 でも、不老不死だからといってみんなが永久に生きていたら困りますから、 処置を受けてから100年たったら死ぬようにしよう。 というのが百年法の趣旨です。 ところが、不思議ですね。 それに同意して処置を受け、それから100何十年生きてきたのに、 やっぱり死ぬときになると、怖くてじたばたするんです。 科学がこんなに進んでいても、ここらへんは変わらないです。 それからもう一つ変わらないといえば、 百年法を施行しなければならない政治家たちが、 国のことより自分のことが大事。目先のことが大事。 結局それが大変な事態を招くんですが、こういうのも今と変わりませんね。 ほんとに生々しくて、嫌な感じと思いながら読みました。 それで結論までひとっ飛びすると、不老不死は破たんするんです。 その経緯は書きません。 でも、やっぱり自然が一番、人間はそれぞれの寿命を生きるのが一番。 そんな結論に至って、ほっとしました。 なかなかおもしろい小説です。好き嫌いはあると思いますが。 ところで、著者の山田宗樹さんは、 あの「嫌われ松子の一生」の著者だったんですね。 わたし、「嫌われ松子」を読んだとき、あまりおもしろくなくて、 このブログに悪く書いたような記憶がありますが、 「嫌われ松子」と「百年法」の共通点のなさに驚きました。 作家ってすごいですね。ちょっと見直してしまいました。 (なんて、上から目線ですみません。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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