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カテゴリ:弁理士試験
訴状を起案する弁護士は、司法試験に合格し、司法修習で訴状の書き方、裁判の進め方などの演習をみっちりと行う。裁判官もこれと同じコースを歩んでいるので、弁護士のバックグランドが担保されていることは知っている。だから、訴状で請求の趣旨の後にいきなり請求原因を書き始めても問題ないのだろう。
しかし、弁理士試験は、このバックグランドができているかどうかを確かめる試験である。従って、「・・・このような甲の行為を、特許権者乙は差止めたいと思っている。乙が差止請求訴訟において主張すべき点は何か論ぜよ」という問題が出た場合に、いきなり「乙は特許権者であることを主張すべきである」と書くのは好ましくない。レジメ丸暗記という感じがするからだ。訴訟系問題の場合、訴訟物となる権利の発生根拠条文を最初に挙げ、その法律要件に事例を当てはめていくのがよい。 それでは、特許権に基づく差止請求訴訟の場合を考えてみよう。 特許法上、差止請求権は100条1項に規定されている。100条1項には「特許権」という文言が出てくる。特許権の効力は68条に規定されている。68条には「実施」という文言が出てくるが、これも2条3項各号に規定されている。 さて、これで権利発生根拠条文が一通り見つかった。では、答案を書き始めよう。 「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有し(特68条)、これを 侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(特101条1項)。ここで、「実施」とは、特許法2条3項各号に定めた行為をいう。したがって、乙は以下のことを主張すべきである。」 これで、最も重要な条文が挙がっているし、法的思考プロセス(要件事実の考え方)ができることが試験委員にアピールできる。 あとは、上の書き出しを順次分説(当てはめ)していけばよい。すなわち、 「1 乙が特許権者であること。・・・・ 2 甲の行為が業としてであること。・・・ 3 甲の行為が特許発明の実施に当たること。・・・」 を書いていけばよい。書き出しに書いたことを全部記載(主張立証)できれば、裁判官は原告勝訴判決(試験委員が合格点)をくれるだろう。 答案の基礎(1) で書いた訴状の流れ(原告特許権の特定、被告の侵害行為の特定、侵害)は、この答案できちんと構成されている。 訴訟系問題の試験委員は、法曹関係者が多く、また、弁理士でも付記を受けている人が多いことに鑑みれば、このような答案には好感をもってくれるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.06.17 09:26:18
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