カテゴリ:山とスキーの道具
引っ越したいなという話をどこかでしたら、いつの間にか話がトントン拍子に進んで、自宅を買ってくれるという人が見つかって、とりあえず今、家の中を整理しているところです。
この家に引っ越して来てから10年間一人暮らしでしたが、貧乏性のせいで持ち物が大変多くて、引っ越すとなると、それを全部持っていくわけには行かない感じです。 片側で42キロあるヤマハのNS1000Xは持っていけそうにないので、ビクターのSX-500かパイオニアのS-101Cのどちらかに絞らなければならないだろうし、自転車も4台は無理です。 ネイキッドのスペアタイヤ3セット12本も、スタッドレス1セットぐらいしか置き場は確保できないだろうし、カブは持って行けてもせいぜい1台です。 5台あるパソコンは、今使っているこのノート1台で充分かも知れません。 3500冊以上ある本も悩みどころです。そのほとんどは、ブックオフでも買ってもらえそうにない古本ですが、棄てるのは忍びないので、とりあえずダンボールに入れて部屋の隅に置いてあります。 これらの遊び道具はほとんど貰い物ですが、持っていけない物は、結局実家のプレハブに保管することになりそうです。 それらの遊び道具に比べて山道具はそれほどないので、全部持っていくことも可能だと思っていたのですが、押入れを開けてみると、最近は使っていないものがいくつも出てきました。 その一つが10年ほど前に先輩にもらったグレゴリーのグラビティという40Lザックです。 自分の体に合わないからとくれたのですが、私の体型にはピッタリで、背負い心地がとても良かったので、もらった当初は頻繁に使っていましたが、最近はビニール袋に入れたまま桐箱の中に放置状態でした。 その理由は、この6年ほどは山登りにはほとんど行かず、山スキーにしかザックを使わないものの、このザックは自重が2400グラムくらいあるので、体力が落ちてきた自分が山スキーに使うには、重さが負担になってきたからです。 しかし、気に入っていたので、手放さずに大切に保管していました。 そして今回、引っ越し整理のために押入れに入れてあった桐箱の一つを開けて、久しぶりにビニール袋に包んでおいたそのザックを出した所、異臭がしました。 咄嗟に今年の冬に師匠の友人Oさんから聞いたグレゴリー異臭事件を思い出しました。Oさんのグレゴリーがグラビティだったかどうかは覚えていませんが、私のグレゴリーも、ついにその餌食になったことを理解するには、ザックを開けて内側を確認するまでもありませんでした。 すでに雨蓋からも異臭を放っていたからです。 原因はポリウレタンコーティングの劣化です。 それにしても、グレゴリーのザックはなぜここまで臭くなってしまうのでしょうか? それとも、このような異臭を放つのは、グレゴリーでも一部のモデルだけなのでしょうか? 手元にあるミレーのデイバックやマジックマウンテンやケリティの古いザックも、PUコーティングの加水分解が進んで内側はポロポロですが、このような臭いはしません。 ミレーの70Lザックは高校の頃から20年以上使いましたが、手放す時までこんな臭いはしませんでした。ICIオリジナルの30Lザックは25年使っていますが、未だにPUコーティング自体剥がれていません。 グラビティの他に、唯一これに似た臭いのザックは、小学5年の時に地元の山道具店で買ったP4オリジナルザックですが、約30年使用したこのザックも、ここまで臭くはありません。 グラビティは貰い物ですが、発売当時は3万以上はしたはずです。 現在山スキーに使用しているオスプレーやロウアルパインのザックと比べてもかなり高く、恐らく私が所有しているザックの中では一番高価なはずです。 なのになぜ、こんなに臭くなってしまったのか、高い物は良いという常識から考えると合点がいきません。 高級感を醸し出すだめに、わざとこのような臭いを付けたのではないかとさえ、疑いたくなります。 グレゴリーのザックは他にアドベントプロとスティミュラスを所有していますが、それらもいずれこんな悪臭を放つのかと思うと、ちょっと悲しい気持ちになりました。 この臭いで思い出したのが、スイスのPBドライバーです。 PBは、誰もが認める世界最高のドライバーメーカーだと思うのですが、唯一の欠点は、密閉容器に入れて保管しておくと、ドライバーの柄の部分が非常に臭うようになることです。 下の写真のキャブレター用のドライバーとタイヤレバーも、柄の部分が非常に臭くて握るのも躊躇われます。他の工具に臭いが移りそうで、工具箱に入れたくありません。今では屋外保管です。 この二つの事例から学んだのは、高価な物が無条件に長く使えるとは限らないということです。 話を戻して、桐箱に入れて大切に保管していたこのグレゴリーのザックも、保管状態故にPUコーティングの劣化を早めてしまい、すでに寿命が来てしまったようです。 あるいは保管状況に関係なく、10年も経てばザックはどれも寿命なのかも知れません。 しかし、臭いからといってすぐに捨ててしまう気にはなれません。 腐ってもグレゴリーです。 ザックメーカーのロールスロイスと揶揄されるグレゴリーのザックは、背負い心地に関しては、やはり一日の長があると思います。 このグラビティは40Lと小さめですが、フレームが非常にしっかりしているので、例えばボッカ訓練でも30キロくらいは石が詰められそうです。 しかし、年をとって今からそんな訓練を自分に課せるのかと自問してみると、絶対にできそうもありません。 使い道がないと分かっていても、やはり棄てることが出来なくて、Oさんにアドバイスを頂いた通り、重曹処理を行うことにしました。 Oさんによると、洗ってもファブリーズでも取れなかったグレゴリーザックの臭いが、重曹水をスプレーしただけで魔法のように消えたそうです。 重曹水は400mlで200円ほどで売られています。100円ショップにもあるようです。 私の場合は粉末を1キロ購入して、お湯に溶かして重曹水を作りました。 粉末は、カワチで1キロ380円くらいでした。 しかし、私のグラビティは重曹水のスプレーだけでは臭いが完全に取れなかったのと、スプレーした生地に白い跡が残るのが気になったので、結局丸洗いすることにしました。 一般的にザックを丸洗いするのは良くないとされていますが、それはポリウレタンコーティングを傷めてしまうからという理由が大きいようです。 なので、PUコーティングを落としたいのであれば、むしろ丸洗いの方が理想的です。 ネット情報によると、濃度約2%の重曹液に一晩浸すと、劣化したPUコーティングを完全に落とすことも可能らしいです。 また、PUコーティングを剥がした後に、シリコンシーラントをラッカー薄め液で溶かした液体を塗ることで、防水性と張りを復活出来るそうです。 こちらはまた別の臭いで苦しめられそうなので、両方手持ちの材料ですが、私は試してみませんでした。 ということで、洗濯前に重曹液に一晩漬けておくことにしました。 浴槽に浸けるのは嫌だったので、プラスチックの衣装箱を使いました。 これなら背中に金属の入っているグラビティでもそのまま浸けられる大きさと深さがあります。 途中で何度か重曹水を撹拌し、ブラシでPUコーティングをこすると、劣化したポリウレタンコーティングが垢のようにゴソゴソ落ちました。 こすらなくてもコーティング自体を溶かしているようで、2時間ほど浸すと重曹水が茶色く濁ってきました。 しかし、完全に落とすには非常に手間がかかります。 特に、生地を縫い合わせる折り返し部分の隙間は、歯ブラシなどで念入りにやらないと取れません。 それでも、グラビティの場合はコーティングされているのが雨蓋と本体の絞り部分だけなので、全体がコーティングされているザックに比べれば比較的楽だったと思います。 頑張ってPUコーティングを落とし、液体洗剤で手洗いした結果、あの臭いがほぼなくなりました。 使用した洗剤については、洗剤の匂いとの相性が気になったので、本体を洗う前に、雨蓋を2回洗って乾かし、アリエールとトップクリアリキッドで乾燥後の匂いの違いを確認してみました。 いつもは好みに合うアリエールが、グラビティの場合はイマイチだったので、今回の洗剤はトップクリアリキッドを使いました。 衣装箱にお湯を入れて3回すすいだ後、タンブラー乾燥はせず、そのまま屋外に吊るして自然乾燥させました。 今日で二日目ですが、パッド部分を除けばほぼ乾いてきました。 数日吊るして置けば、厚い背中パッドもそのうち乾くだろうと思われます。 今回の重曹処理の結果、雨蓋や絞りのポリウレタンコーティング部分の防水性は無くなりましたが、本体部分のメインファブリックはポリ塩化ビニルをしみ込ませたシェルターライトとかいう厚い防水生地なので、こちらの防水性は未だに健在のようです。 すすぎ時にザックの中に水を入れても、縫い目からしか漏れませんでした。 雨蓋とシェルターライトが使われていないザックのサイドは、シリコン系の防水スプレーで処理する予定です。 一度は捨てようと思ったこのザックも、なんとか背負いたい雰囲気が復活したので、今シーズンの山スキーには、どこかで出動させる予定です。 ほぼ体力に影響されない赤城専用ザックにするのが良いかもしれません。 結局、まだ使えそうな物が捨てられないというのは私の性格なのか価値観なのか分かりませんが、この性格を変えて、要らないものを棄てていくのは難しそうです。 ただ、今回のように大切にしまっておいた物が朽ちていくのを見ると、やはり物の命も有限で、なるべく使いたい時に一番使いたい物を使うのがいいのかなと教えられました。そのおかげで道具をメンテする時間がまた増えてしまっても、それもまた自分の趣味として受け入れるべきなのかも知れません。 そんなわけで、引っ越し仕分けはなかなか捗らず、引っ越し自体が面倒に思えてきました。 そもそもこの引っ越しの目的は、「合理的に遊ぶ」という矛盾した願望に起因するようです。 具体的には、2年前の大雪の時のように玄関からスキーを履いて出られる場所に住むことです。 しかし、合理化した結果、これらの無駄を無くしてしまうと、私の遊びは成り立たないのではないかと思えてきました。 引っ越さなくても、まだまだここで遊べるのではないかと思いはじめています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.09.27 15:03:30
[山とスキーの道具] カテゴリの最新記事
|