Honey & Milk

私の職場は、２階建ての建物の１階にあり、
オーナーさんは２階に事務所がある。

日頃から、海外へ行ってきたので・・・などと
珍しい紅茶をくれたり
うちのリンゴを収穫したので・・・とか

意外性のある、それでいてあまり気を遣わずともよい
「おすそわけ」を「皆さんでどうぞ」と届けてくれる。

けど、最初の頃はドアを開けてすぐの
入り口で、お礼やご挨拶かたがた立ち話をして
いたにもかかわらず、

このごろ、奥まで入ってきて、なかなか出ていって
くれないのだ。

だから私は、椅子をすすめることをせずに
自らも立って対応。あくまでも「立ち話」で
終わらせるためなのだが、その話の長いことと
言ったら!!!


足が疲れてくるのを感じ、片足に体重移動を
交互に数回繰り返す。
まるで「全校集会」の、校長先生のお話を聞く生徒のよう。



オーナーさんは６０才には見えない、若々しさではあるが
やはり孫がいるという。

「最初の奥さんの子はもう子供がいてね。」

(ふーん、再婚してるんだ・・・)

「今の奥さんは○○ビルの３階に、ハーブのお店を
　出しているんだけど・・・」

あ、お目にかかったことがあるかも知れません。
メガネをかけていらっしゃる方がそうかしら？

「いやいや、今の奥さんは絶対にここには来ないの。
　２番目の奥さんに、まだここで働いてもらって
　いるから。ショートカットで気の強そうな、知らない？」

(２番目とかって、一夫多妻制かよ!)

ああ！お見かけしました。綺麗な方ですねー。
(へーーーーーーーーーーーーっ。前の奥さんを雇っている
　とは・・・。林檎畑は持ってるわ、あそこのアパートも
　ここも持ち物で、向こうの角が自宅ということは・・・
　うーむー。何回結婚しても特に困らんのね・・・。
　しかし、私の倫理観がぁぁぁぁっ)


もう、なんと相槌をうってよいのか、多少混乱している私に
「私は綺麗な女性を見ると、夫がいようが子供がいようが
　とまらなくなってしまうのですよ。あなたも気をつけて。」

ははははは。


と、その後にシレッと続けた。
「知っていますか？人間って、『緊張』や『警戒』すると
　両手を前で組むんです。」

自分の両手を見下ろすと、前で組まれているのに気づいて、
「あらま。」とおどけてみせた。
自意識過剰だったわね。と内心苦笑いしつつ、

オーナーさんが出て行くまで、意地でそのまま両手を
前で組み続けた。(爆)

私をからかって、退屈を解消されたようで鼻歌まじりに
歩いて行く音を聞きながら、漸く椅子に座り
６０歳には太刀打ちできんわと。


そろそろ、リンゴの時期よねぇ。
リンゴは喉が痒くなるから、
私は巨峰がいいんだけど。・・……(-。-) ボソッ