カテゴリ:映画、テレビ
「もしもピアノ(キーボード)が弾けたなら」(評価 ★★★★☆ 四つ星) 現代のベートーベンと呼ばれていた聴覚障害をもつ作曲家(佐村河内守さん)が、実は別人(新垣隆さん)に楽曲を書かせていたという事件に関するドキュメンタリーを鑑賞した。 <感想> 興味深く観られたけれども、この映画制作の目的が、「佐村河内さん側の言い分を中心に事件の真相に迫る」というよりかは、「(真相はどうであれ)事件が佐村河内さんや家族にどのような影響を与えたのか」に偏っているような印象を受けた。それならそれでいいのだけど、やっぱしこちらとしては「真相」を知りたいわけで。 この映画の前半部分を観てる段階では、佐村河内さんって、耳に「障害」があるのは事実だけれど、音楽に関してはチョー素人、という印象を受けた。楽器を弾いてみてくれないかと外国人記者から問われ、「キーボードは捨てちゃったんで、弾いてさしあげることはできないんっすよ」とか言い放つあたり、ますますアヤシイ。あと、ぼくは彼が「ピアノ協奏コンチェルト」という言葉を発したときに確信した。作曲を職業としてる人が「協奏コンチェルト」と誤用(二重表現)するなどありえない。 でも、映画終盤に近づくにつれ、佐村河内夫妻が、不器用ながらも健気に実直に生きている善良市民っぽくも思えてきて、逆になんだか新垣さんのほうも信じられなくなってきた。てゆーか、ぶっちゃけ、どっちもどっち。 せっかくいい題材を撮ってるのだし、ドキュメンタリーとしての編集にもっとキレがあったほうが良かった。思いつくままに箇条書きにしてみると、 1. 佐村河内さんの「耳の障害」の程度とその経過/変化について 2. 佐村河内さんの音楽に関する知識や作曲能力について 3. 新垣さん側の言い分の信憑性について 4. 佐村河内さんの性格について(目立ちたがり、虚言癖、夫婦愛) 5. 新垣さんの性格について(事件後、雑誌やバライエティ番組への過度な露出) 6. マスコミの両氏への取材および世間への報道のしかたについて 7. 両氏のマスコミへの対応について 8. 音楽/美術/文芸業界におけるゴーストライティング(=同僚や弟子や代理人が名前を伏せて作品を提供すること)の実態について など。 最も興味深かったのは、この監督(森達也さん)は新垣さん側にも取材を試みたものの断られてしまったと言っている点。第三者が主観抜きに冷静に分析、整理できていれば良質のドキュメンタリーと呼べるけれども、この映画の場合、究極的には、佐村河内さんと新垣さんとの「対談」をなんとか実現してほしかった。特に上記8番、芸術作品の委託制作について、掘り下げて討論してもらうとか。
あるいはいつの日か週刊文春あたりで実現してくれないだろうか。もう芸能人の不倫ネタなんかはどーでもいーので。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Sep 16, 2017 03:59:48 PM
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