カテゴリ:映画、テレビ
「きれいなお姉さんは好きですか」(評価 ★★★★★ 満点五つ星)
現在日本で公開ちゅう。http://girl-movie.com/ 男子として生まれたものの、ララという名前の女子としてバレエ舞踏家をめざす10代のお嬢さんの話。 <感想> 主演男優さん(←ご自身は男性)のご演技が素晴らしいうえ、とにかく演出が秀逸。監督はルーカス・ドンというお若いお方だそうで、このお名前はぜぇったいに覚えておこうと思う。今後必ずチョー大物になられると断言できる。ダルデンヌ監督の後継者と言ってよい。パチパチ。 長回しの撮影で魅せるかと思えば、小さい場面もちょこちょこ挿入してメリハリをつける。役者の息遣いとか足音とか、意外な音が強調されてたりして、細部にこだわりも感じさせる。静と動、光と影、確かな映画力を見せつけられる。 しかし、映画自体はサクサク進む。ララの初恋とか父親の再恋とかの小ネタもいくつか登場するのだけれど、そこに停滞することはなく、あくまで主人公が女になるために努力し苦悩しているさまを接写していく。 女子会に参加しつつも途中で帰ってくる場面、近所の男子とぎこちなく接する場面、どれもこれも痛々しい。そもそも思春期の少年少女にとって、オトナになっていくことはただでさえタイヘンなこと。ララの場合は、性転換手術するだけでもすごいのに、さらにはバレエ女子を目指してるからなおさら。例えばバイオリン奏者になりたいとか起業家になりたいとかだったら男でも女でもかわらないけど、クラシックバレエの世界では「男らしさ」とか「女らしさ」が執拗に求められるわけで、難易度高し。 この映画、悪役が全く出てこないわけでもないけれども、基本的に周りは彼女を理解しようとしている人ばかりで救われる。具体的には父親。我が子の意思を尊重し、心から愛情を持って接しているのがわかるし、彼は意外なほどに完ぺきキャラ。単親でご苦労も多いだろうに。 六歳の弟さんも、兄が姉へと変わったことで動揺してるに違いないのに、じゃれて遊んだり、わがまま言って困らせたりして、ごく普通の姉弟ぶり。(ちなみに、ララが男だったころの名前がビクトルであることは弟の失言から判明するのだけど、こうゆう描写や演出もいちいち上手い。) 好むと好まざるとに関わらず、こうゆう映画観て何らかの感想を持つことは大切だと思う。決して幸せな結末ではないし、今後の彼女の暮らしぶり仕事ぶりも気になるところ。しかし、上から目線、好奇の目線であれこれ土足で詮索することはご本人を苦しめる可能性もあるわけで、そっと放置というのもまた選択肢のひとつか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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