動物園の後、私達はスーパーでランチ用にとサンドウィッチを購入し、アウグスブルク市内から10kmほど離れた場所にある湖へと向かうことにしました。
「ちょっと待って、電話が掛かってきた。」 電話の主は、ムラトさんと同じくトルコ人のオザール。 時々従兄弟の助けを借りながら、一人で車の修理業を営んでいるというその彼は、27歳の青年です。 「オザールのヤツ、スーパーに停まっているこの車を見つけたんだって。 近くにいるんだから、ちょっと寄って行けってことらしい。」 そこで、私達は彼の作業場に少しだけ立ち寄ることにしました。 小柄で、顎髭が自慢だというオザール。 彼は気さくな表情で私達を出迎えてくれ、私達二人のことをまるで身内のように喜んでくれます。 そんなに喜ばれても、、、と、先ほどからずっと失くしたナザール・ボンジュウが気になって仕方のない私は、複雑な心境でその場に立っていました。 「picchukoは姉妹はいるの?」 作業をする手を休めて、オザールは私に話を振りました。 「うん、姉がいるけど、、、。」 「じゃぁ、今度はお姉さんを連れて来て! 僕も日本人が大好きだから!」 「え"~、でもうちの姉ちゃんは私よりも10歳以上も年上で、しかも孫がいるんだよ!(笑)」 こんな冗談じみた会話で、少し緊張気味の私の心をほぐしてくれたオザールは、すでに子持ちの愛妻家です。(笑) おかげで気持ちが上向きになった私は、オザールと再会を約束し、再び車に乗り込みました。 * * * * * * * 「オザールがpicchukoに宜しくって言ってたよ。^^」 帰国後も、ムラトさんとの会話にはオザールは頻繁に登場します。 彼が一番の親友だ!というだけあって、よほどオザールのことを信頼しているもよう。 最近、そのオザールの紹介でミュンヘン郊外に転職したムラトさんは、新しい職場においても人間関係に恵まれ、いい友達が増えている様子です。 ランチタイムに掛けてくる電話の向こうで、いつも私に手を振ってくれるのはベトナム人とポルトガル人の友達。 片道40km以上もある通勤距離も、親切な周りの人達のおかげで、随分と気持ち的に助けられているようで私も安心しています。 そして、新たに親友と呼べるほど親しくなったのがイラク人のアランで、先日もアランの家にいるんだと、ムラトさんは嬉しそうに声を弾ませていました。 「picchuko、ほら見て!」 彼が指さす先には、大きな刀が3本。 アランの家には(本物ではないと思いますが)立派な刀が飾られておりました。 「それって中国刀?」 ちょっと派手な色合いに、そう尋ねてみました。 「いいや、日本のだよ。」 そういえば、アランだけでなく、ムラトさんも結構 "SAMURAI"好き。 正確には、"SAMURAI"というより、"SYOGUN"好きかな。(笑) トラナガという"SYOGUN"が相当気に入っている彼にとって、トラナガこそ日本を代表する人物なのです。 トラナガ? トクガワの間違いじゃないの??? アシカガ? どちらにしても、一文字しか合っていないし。。。 「いい? 日本の歴史には、トラナガという将軍はいないんだよ。」 そう何度説明しても、笑いながら「トラナガ! トラナガ!」と繰り返すばかり。 誰? 変な日本史を彼らに教えたのは! って、よ~く話を聞いていると、30年ほど前にトルコでトラナガという"SYOGUN"の映画を見たと言うのです。 そんな映画知らないし、、、。 と思って調べてみると、本当にあったんですね~。 しかも、三船敏郎さんがトラナガ役で出演しているし!@@ どうやらその映画、トルコだけでなく欧州でも人気があったようですが、 日本でも上映されたということも私は知りませんでした。 彼らが持つ日本人のイメージを知る為にも、今さらながら私も一度はその映画を見ておこうかな、とも思ったりして。(笑) 「picchuko! いつか、高松の蝋人形館にも連れて行ってよ。」 先週末に平家物語歴史館で撮った写真を送ると、彼は喜んで言いました。 たとえ映画や書籍から武士道や大和魂を感じとれたとしても、きっと平家物語の表す「無情」や「あはれ」は理解できないだろうな~。 そんなことを思いながら、電話の向こうで手を振るムラトさんとアランに応えました。 「いい! トラナガさんは架空の人物だからねっ!」 もう一度だけ、念を押しておきます。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.26 06:24:55
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