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2012.10.31
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さすがに、夜行列車は乗客も少なく、全てのコンパートメントが埋まるというのは珍しい。


それなのに、そのコンパートメントが全て満室だとは、

ミシェル車掌が言うように、世界中の人が今夜旅行に出ることにしたか、
前もって、全て計算されていたか、、、


あ、これは、アガサ・クリスティ作『オリエント急行の殺人』での話。

641.JPG


さすがに寝台車両を使うほどの贅沢な旅は、今回の私にはできなかった。
それでも一応、予約席なのだが。

だから、6席ある3つずつ向き合う形のコンパートメントに横たわった。

一人きりの時もあるし、見知らぬ男性と一緒になったこともある。
そういう時、なまじ個室なだけに異様な緊張感がある。

照明を消した室内は、車窓から時々忍び込む青白い灯が走り去るくらいだ。
そして、静寂の中をゴトンゴトンと響く音。



そんなコンパートメントでも、昼間となれば話は別だ。

個室ゆえか、目が合えば二言三言交わしたり、先に降りる者は「じゃ、お先に」と声を掛けて席を立つ。

全く目も合わさない乗客は、数知れず乗った列車の中で2~3人もいただろうか。



272.JPG


それは、セルビアのノヴィ・サド駅から乗った時のこと。

珍しく大混雑の乗客で、私は一つだけ空いた席を見つけた。

コンパートメントの6つの席のうち、埋まっている5つの席には仲間らしい16、7の男の子達が陣取っていた。
何やら大いに盛り上がっている。

だから、わざわざドアを開いて、そこへ座ろうとする者はなかった。

かといって、ぎゅうぎゅう詰めの廊下に立つのもしんどい。
ノヴィ・サドからベオグラードまでは1時間半ほど掛かる。 しかも、列車はすでに30分遅れだ。


「ここ、いいかしら?」 私はドアを開けながら、恐るおそる尋ねてみた。


「どうぞ! どうぞ!」 全員が手を伸ばし、にこやかに答えてくれた。
え? 意外な反応に思わず拍子抜け。


向かい側の真ん中の席に座る男の子が、一番に話し掛けてくれた。
「もしかして、日本人?」

「ええ。」

「ほら!やっぱり~。俺の勝ちだ!」とでも言っているのだろうか、勝ち誇った表情で仲間を見回した。
この列車内を見渡しても分かるように、あまり東洋人を見かけることはないらしい。
もしかして、私が何人(なにじん)か賭けていたとか?(笑)


「こいつ、日本語の詩を知ってるんだぜ。」 彼は一人の男の子を指さした。

すると、私の同列の右端に座っていた男の子が、ひとつの詩を音楽に乗せて歌い出した。

どこで聴いたか、それは戦前の古い映画にでも出て来そうな唄。
私はそれを知らなかったが、日本人なら懐かしさを感じる唄だ。

男の子にしては高音の、優しい歌い方だった。

君、本当にセルビア人? 私は驚きを隠せず、彼の顔を覗きこんでみる。

「ね、合ってる?^^」 そう言って、今度は彼の方が私を覗きこんできた。

「うん、合ってるよ。^^」
間違いなく、日本語だ。 だから、合っているはず・・・。
しかし、その歌詞が古過ぎて、正直、意味すら分からなかった私は、自分が日本人かどうかの自信がなくなってきた。(笑)


見るからに大柄で、眉もまつ毛も太くて濃い 西洋人にはない彫りの深い顔達だった。

だから、本当はこの席に座るのに勇気がいった。

だが、列車の風景にこんな思い出を残していってくれたのも、
セルビア青年の気さくで温かい人柄と、コンパートメントという独特の空間のおかげだろう。



社交場としても、はたまた殺人事件の舞台としても(!)、列車はスペシャルな存在感でもって楽しませてくれる。



写真は、一枚目がドイツ、ミュンヘン中央駅構内。
二枚目が、この日記に登場するセルビアはノヴィ・サド駅ホーム。


Google map<2012.09.15 Beograd - Novi Sad>





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Last updated  2012.11.01 06:10:12
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