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I love Salzburg

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2012.10.29
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そのシンプロン=オリエント急行は、終点のカレーを目指し、イスタンブールを出発した。

カレーという町が、海峡を挟んで英国と向き合うフランスの都市だということは、ロダン作の彫刻『カレーの市民』のおかげで、私でも知っていた。

順調に進めば、3日後にはヨーロッパ大陸を横断できるはずだった。

だが、事件は起きた。 ユーゴスラビアで。 

ベオグラードを21時15分に発車し、その3~4時間後のことだった。
列車は大雪のため、立ち往生している。



ここまで書けば、いや冒頭でお気づきか、
私は今、アガサ・クリスティの代表作『オリエント急行の殺人』を読んでいる。

日頃 推理小説に手を出すことのない私が、夢中で貪っているその理由は、

ユーゴスラビア、そして列車という舞台設定に引かれたからだ。

273.JPG


育った処が鉄道と縁の深い町だからか、私は乗り物の中で一番列車が好き。

四国鉄道発祥の地であるとともに、高知行きと松山行きの列車が私の町で分かれる。


キキィ~。 昔はここで、それらの列車を連結したり切り離したりしていた。
時に不愉快に感じる その音も、知らぬ間に町の音風景となっていたようだ。

今でも夜になると、駅から数分のわが家には、ゴトンゴトンと走る音が風に乗って運ばれてくる。

だから、乗らなくても それは子供時代の私の日常にあった。

246.JPG


EU を出ると、列車においてもパスポートチェックが行われる。

クロアチアはクロアチアの、セルビアはセルビアの独特の雰囲気でもって、それは行われる。
真夜中の国境越えでは顕著に表れた。 ドキドキする瞬間である。


真っ黒な夜のとばりの中、キキキキキィ~とブレーキがかかる。

話し声が隣りから漏れてくる。

すると、私の居るコンパートメントのドアが開き、シャッとカーテンが開かれた。
紺色の制服を着た2人の男が立っていた。 無言の圧力感がある。


外には、照明の乏しい長いホームと、何本も伸びる線路の上を寄り添って歌いながら去って行く4~5人の男の子達が見えた。
吐く息が白いのが私からも分かる。

セルビアは 『Sid』 という駅だ。

彼らはフードを頭に被せ、ズボンのポケットへ手を突っ込む。
彼らが身を寄せ合っているのは、思いの外 寒さ厳しいせいだ。


執拗にジロジロと人の顔を眺めた警官からパスポートを受け取ると、私は足を伸ばした。

なのに、すぐ別の男が入って来る。
変な物を持っていないか、探知機のようなもので座席下まで調べられた。

30分くらいしただろうか、確か20分は優に過ぎたと思う。
ゴ、ゴトン、ゴトンゴトン、、、ゆっくりと列車は再び夜を走り出した。

しかし、それも数分のこと。
またも列車はキキキキィ~と停まり、クロアチア側のチェックが始まった。
気持ち、セルビア側よりも優しい感じがしたのは気のせいか?


361.JPG


オリエント急行のような贅沢な列車の旅はできなくとも、その線路も そこから見える風景も変わりない。
作品が生まれて80年近く経ているといっても、暗闇に隠れた正体は、どこまでも続く黄色いトウモロコシ畑に違いないだろう。


雪が降っているか、

殺人事件が起こったか、、、の差ぐらいである。(笑)


果たして、犯人は私の思う人物なのか。

異文化の行き交う孤絶の空間、それが立ち往生した場所に、アガサ・クリスティは何故ユーゴスラビアを選んだのか。


ヨーロッパ鉄道の旅、私はまだしばらく楽しめそうだ。




写真は、一枚目と二枚目が、どちらもセルビアのベオグラード中央駅。
三枚目はこの日記と日にちもルートも異なるが、二度目の夜行となったクロアチアのスプリット駅ホーム。


Google map<Salzburg ~ Beograd >





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Last updated  2012.10.30 19:50:58
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