カテゴリ:旅行記 中欧8ヶ国 '12.9月
不思議なことに、それから後はベオグラードに戻ってからも携帯の電波は届いていた。
ムラトさんとのやり取りが続く。 「とりあえず、少しでも早くセルビアを出ること!」 「常にどこにいるかメールしてくるように!」 彼はよほどセルビアを警戒しているらしい。 その日の夜行でオーストリアへ向かうことを彼に伝え、残り僅かなセルビアでの時を過ごすことにした。 * * * 翌9月16日。 午後2時前にザルツブルクに到着した私は、ドイツのケルンからこちらへ向かうムラトさんを待つ。 午後5時前、中央駅にて無事に彼と合流。 それから18日にサラエボへ向けて出発するまでの話は、ここでは省略させてもらう。 18日の午前8時30分、私達はモーツァルトのパパが眠る聖セバスチャン教会前にあるホテルを出て、いざサラエボへと車を走らせた。 あ、ここから先、ムラトさんと一緒にいる間の写真はほとんどない。 カメラを構えると、必ず写真に入ろうとする彼に、段々と写真を撮らなくなったからだ。(笑) いや、別に彼が写ってもいいのだが、何百枚と彼ばかりの写真というのも なんとなく照れくさいし、たぶん、それより私は彼の腕にあるタトゥーが気に入らないのだ。 肩には彼の愛犬、そして左胸にも" HIROSHIM "と彫ってある。 「何?ヒロシムって?」 「ヒロシマだよ。」 「なんで、ヒロシマ?」 「だって、ヒロシマが好きで、いつか行きたいと思ってるんだ。」 「ヒロシマって日本の?」 「そうだよ、あのヒロシマだよ。」 広島で住んだことのある私でも、いくら広島が好きだからといって胸に刻もうとは思わないが、 彼は私と付き合う前から このタトゥーを入れていた。 「でも、ヒロシムだよね、これ。」 「あはは、あぁ これね、彫ってる時のあまりの痛さに、最後の A が耐えられなかったんだ。」 「なんじゃそりゃ。」 「今度は右胸に" picchu "って入れるよ。」 「えっ! やめてよ!」 「なんで、僕の勝手じゃん。」 「そうだけど、もうこれ以上 タトゥーはしないで。」 以前、こんなやり取りがあった。 今思うと、私の名前のタトゥーをしなくて本当に良かったと心の底から思う。 そんなもの体に彫られたら、なんか呪縛されてるみたいだ。 とまぁ、話はあらぬ方向に逸れてしまったが、そういう訳で写真はない。 * ザルツブルクからアルプスを越えてスロベニアへの道中は、真っ青な空とわたがしのような雲、頂上に雪化粧した山々が美しかった。 スロベニアからクロアチアに入ると、若干 道路の舗装が悪くなったものの、広がるトウモロコシ畑はセルビアで見たそれと打って変わって気持ちがいい。 晴れた日の、どこまでもどこまでも広い大地とは、なんと気分を大きくさせるものか。 ところどころに家並みを見かけても、ビルのない爽快さ。 だが、その晴れ晴れとした気分はボスニア入国とともに少し変わってくる。 夕方になり、少し薄暗くなってきたせいもあるが、土地は荒れ、侘しい景色が目の前に続く。 バルカン半島には禿げ山が多く、アドリア海側からボスニア・ヘルツェゴビナ入りする時は、灰色に茶色い点々模様のような、少し乾いた感じの景色と出会うのだが、 同じクロアチアでもザグレブ側(北側)から下りて来たこの時の印象は、錆びた赤茶色だった。 どんな田舎の村にも20年前の紛争痕は残っており、寂しい感じは否めない。 二人とも、明らかに口数が減ってきた。 それでもサラエボに近づいてくると、山の斜面にも灯りがともり、少しづつ開けてくるのが分かる。 大都会のようなキラキラした眩しい夜景ではないものの、品の良い白い光の玉がいくつもいくつも真っ黒な背景に散らばってきた。 「なんか、お洒落だよね。」 二人とも同じ感想だった。 サラエボに着いたのは、夜の8時くらいだったろうか。 街にはこれからが今日の本番!とでもいうような、なかなか粋な若者たちが行き来していた。 モダンな服装に、吸い込まれそうな綺麗な顔、スタイルだってバッチリだ。 「picchuko、何してるんだ!」 そう何度もムラトさんに叫ばれるほど、私は道行く若者たちをじっと見つめてしまってた。 美しすぎる。。。 ここは昔から洋の東西が出会ってきた場所に違いないが、東と西が絶妙なバランスで混ざり合うと、かくも美しくなるものか。 私は感動を抑えきれなかった。 「picchuko! 行くぞ! 早くホテルを探さなきゃ!」 まったくその通りである。 我に返り、小走りで彼を追った。 3つ目のホテルで手をうった。 サラエボの見どころ、旧市街の真ん中という立地で手頃な宿を見つけた。 サラエボは意外とホテル料金が高い。 だが、レベルも高いと思われる。 そんな中で私たちが決めた『Evropa Hotel Garni』は、朝食、駐車料金込みで一部屋一泊8000円くらい。 トルコ風の絨毯と家具も洒落ていた。 トルコ人のムラトさんが喜んだことは言うまでもない。 貴重な写真は、一枚目がそのホテルにて、二枚目は次の日の朝に撮ったホテル界隈の風景。 Google map<2012.09.18 Salzburg - Sarajevo> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.11.10 10:26:18
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