カテゴリ:旅行記 中欧8ヶ国 '12.9月
「一曲、リクエストある?」 私の隣りに座るご夫婦は、ちょうどその日が奥さまの誕生日ということで "Happy birthday to you" をお願いしていた。 「君は?」 気が付けば、私の番だった。 ぼおっとドナウ河の対岸に浮かび上がる国会議事堂に見惚れていた私は、とっさに言葉がでなかった。 「グル、グルゥ、、、ええ~っとぉ、グルなんだったっけ? あのサンデーが好き。(笑)」 「ああ、グルーミーサンデーだね。(笑)」 笑顔で頷くと、離れた場所にいるピアニストに合図をし、彼はバイオリンを弾き始めた。 しっとりとした出だしだ。 このメロディは、本当にブダペストとよく似合う。 3年前、ブダペストを旅した後で見つけた映画『暗い日曜日(Glommy Sunday)』で知った曲である。 映画そのものがブダペストの持つ雰囲気をうまく活かしていたこともあるが、そのもとになった同名の曲が要所要所に流れてきて、映画を一層盛り上げる。 哀しみと甘さの絶妙なバランス、、、 映画の中でこの曲はそう表現された。 頬杖をつき、その切ない調べに耳を傾けながらブダの丘からペスト地区を見下ろしていると、それはブダペストの街を表す台詞でもあることに気付く。 夕暮れ時の物哀しいその街を表現すると、もうそれ以外ないんじゃないか。 それを音楽で表すと、もうこの曲しか生まれないだろう。 そう思った。 そして、以前この場所に立った時よりも、私とブダペストの距離が縮まったように感じた。 気が付けば、薄紫色に霞む街に、一つ一つ光が灯りはじめていた。 一つ一つ、まさにそんな感じだった。 丁寧に優しく増えていく その灯は、ますますその街に甘さと切なさを添えてくれる。 眼下にはドナウがゆったりと流れてゆく。 * オーストリアでは、空から降ってくるような陽気で弾んだ音符たちだった。 それが、雄大なドナウの流れに呑みこまれるうちに滑らかなメロディへと姿を変えてハンガリーまで辿り着いたみたいだ。 ドナウとともに哀しみの味を知った美しい街、ブダペスト。 『Gloomy Sunday』Sinead O'Connor 「あ、チップはいらないから。」 フォリントは持ってないんだよな~と、ユーロの小銭を手渡そうとする私に、彼は言った。 「で、これ僕たちのCDなんだけど。」 雰囲気に流されて、つい買ってしまった。 15ユーロだった。 あぁ~あ、チップの方が安くついたよな。(悔) Google map<2012.09.27 Budapest> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.11.20 08:38:16
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