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2015/10/28(水)22:44

イサムノグチ庭園美術館。

四国へようこそ(117)

イサムノグチが晩年アトリエを構えていた場所が現在、イサムノグチ庭園美術館として開放されている。 香川県は高松市牟礼町。 随分と前から行きたいと思っていたが、それは2週間前までに往復ハガキで予約申し込みをしなければならず、面倒くさがりの私には近くて遠い美術館だった。 だが先月のこと、岡山に住む親友から誘いがあった。 彼女もずっと行きたい思いは強かったのだが、これまでタイミングが合わなかったそうだ。 「10月27日、午後1時に予約が取れました。1時間の見学だそうです。 お昼を食べてから行きましょう。ランチはpicchuちゃんにお任せするわ。」 少しづつ木々も色づき青空が美しい季節、太陽の下で制作し続けた彼の作品を鑑賞するのに最高の機会である。 そしてそれは、想像以上に素晴らしいものだった。 絶妙な空間。 写真では表しきれない大胆な動きと安定感。 思わず手を触れたくなるなめらかな質感。 石の持つあらゆる表情に驚いた。 芸術とは時に挑戦的であるだろうが、彼の作品のもつ美しさは見る人に安心を与えてくれる。 美しいって、すごいことだと思った。 そして、「彼は相当の女好きだったのが分かるよね。」 友人の言葉に思わず笑った私も、かつて石の彫刻にこれほど艶かしさを感じたことはない。(笑) 彼の作品には色気があると思う。 そういうと、ただ表面的に捉えられては全く意味が異なってしまうが、放つ色気がより人を惹きつけてやまないのだと思った。 見学する前に流れていたビデオの中で、日本人とアメリカ人のハーフであった彼はどこにいても異邦人で、根無し草のような孤独を抱えていたというような内容があった。 アトリエはイサムノグチも気に入ったこの辺りで産出される世界でも評価の高い庵治石を積んだ円で囲まれ、彼の指示したとおり完、未完に関わらず、そのままの形で保存維持されている。 彼が線を引き、その上を囲んだというその円を見たとき、もしかしたら、彼はここに自分の居場所を作りたかったのかな、根を下ろしたかったのかな、と感じた。 彼は84歳で亡くなったのだが、84歳の誕生日もこのアトリエで制作していたそうだ。 拠点は彼の生まれ故郷のニューヨークであったが、春や秋などの時候のいい頃はここに滞在していたらしい。 県内の丸亀市にあった武家屋敷を移築し、そこに居を構えた。 1988年11月17日、ここで84歳を迎えた後、もう一つのアトリエがあるイタリアに移った。 そこで風邪をこじらせニューヨークに戻ったのだが、そのまま肺炎となり帰らぬ人となってしまった。 彼は、春にはまたここで制作を続けるつもりだった。 このアトリエはその時のまま、今もイサムノグチとともにある。 それは、屋島と庵治石が採石される五剣山に囲まれた自然豊かな場所にある。 アトリエを見学後に訪れた屋島から、彼が造った庭園の盛り土とそこに置かれた卵型の石が小さく見えた。

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