米朝首脳会談 中止
予兆はあったが、トランプ大統領は、現状を北朝鮮金正恩との適切な会談時期ではない。このように判断した。この判断は、妥当なものである。と私は評価し、強く支持する。トランプ大統領にとって「会談自体」が目的ではない。このことが明確に示されたのは金正恩に正確に伝わったものと思われる。金正恩は、「トランプ大統領は、会談を求めている。多少ハードルを上げても応じてくる。」このように予測していたように思える。この誤判断には、金正恩側近並びに、都合よく迎合した韓国文大統領、自らが主敵となるよりも北朝鮮を利用したほうが得策だ。と心得ているシナ習主席の思惑が交錯した結果であろうが、首脳会談への流れは、「南北首脳会談」を境に急速に冷却していたことを読み切れなかった結果である。今回の首脳会談中止を米国から言わせたことは今後米国非難を繰り返すに好都合、と評し、金正恩がしたたかな外交を展開した結果であるとする人もいるようだが、したたかな外交を行う人物がこのような誤判断をするはずはない。のである。シナ習主席、金正恩の外交音痴ぶりがいかんなく発揮された結果なのである。(韓国文大統領にははじめからそのような能力はない。と見られていたのであるから、改めて言及する必要はないだろう。)米朝首脳会談の中止については、結果として驚くほどのものではないが、その時期(北朝鮮の老朽化し不要になった核実験場の破壊当日)、及びその伝達方法には若干の驚きを覚える。私は、週明け、コメント発表という形式で発表されるものと思っていたが「書簡」での伝達となった。これは、北朝鮮の現体制への「不満」(つまりは金側近に対する不信表明)であり、この書簡は金正恩に向けられているが、その先にシナ習主席を睨んだものであると想像できる。米朝首脳会談を即決したのは、トランプ大統領自身であったことから、「中止決定」も国務長官談話や国務副長官談話などという形式は考えられなかった。直接言及するであろうとは予想していた。(この時期なら国務副長官名で最後通牒を出すことは考えられた。)米韓首脳会談直後であったことから、米国の韓国不信をことさら強調する人がいるかもしれないが、「南北首脳会談の結果」を見て、米国側は完全に韓国を仲介役とした「米朝首脳会談」を否定する方向を向いている。それほどあの会談は、北朝鮮に「宥和的」でありすぎたのである。だからこそその延長線上に「米朝首脳会談を開催する」という選択肢は米国側にはなかった。のである。習主席にしても、現米国の体制が、完全にシナを敵視した布陣であることを見誤っている感がある。何とか「貿易戦争は回避できるのではないか?」このような甘い見通しを持っていたに違いない。シナの通信分野を標的とした制裁措置は、もはや後戻りできない地点に差し掛かっているのであり、今後シナ経済は長期にわたる低迷を余儀なくさせる。結果として「シナの軍拡」に自動的に歯止めがかかる。次に「通貨戦争」であり、国際決済通貨となった人民元は、ドルをバックにする所詮は「ドルペック体制」に他ならず、自前通貨としてあちゅ買われるならば、「輸出国」としての地位は完全に失うほどのだけ気を被るのである。そしてそれをトランプ大統領は、承認・推進している。ということである。北朝鮮という「テロ国家」を支援すれば、自らが「テロ支援国家」となる。これ以上の制裁にはシナの脆弱な経済は耐えられない。よって、シナは北朝鮮と距離を置かざるを得ない。結果として東南アジア諸国の「シナはやはり最後の最後には頼りにならない」という基調も作る。これで、習主席の平壌訪問は、無期限に近い延期となるであろう。この「中止決定」にほくそ笑んでいる要の思われる人物がいる。それは、ロシア・プーチン大統領である。ロシアにとっては、「シナ主導のアジア情勢」は看過できない。(ただそれだけであり、深く関与するつもりはない。自らも参加する枠組みを求めている。にすぎない)プーチン大統領は、日露首脳会談で「北朝鮮情勢」について、安倍総理に「ロシアも参加するような枠組みを構築すべきである。そこには日本も入るべきだ」という主張をしてくるのではないかと思われる。(安倍総理にとっても渡りに舟になるかもしれない。ロシアが潰したいのは、ロシアを除いた枠組みでの解決なのである。)シナが強く関与する枠組みが崩壊し、次なるステージに移った。のが昨日なのである。この会談中止で、「軍事的緊張」などという話が、わが国ではまたぞろ展開され(それは結果として米国を非難する目的)るものと思われるが、現状においての軍事的緊張は「管理された緊張」である可能性が強い。勿論、このデモまた習主席、金正恩が判断を誤れば、「不測の事態が起こる」ことは否定しない。階段を強く望んでいた金正恩は、「会談中止に追い込んだ側近」に不信感を高めるであろう。けっかとして「粛清」という事態が展開される可能性がある。トランプ大統領は、ここまでは期待感を持っているのではないかと感じる。(あくまでも期待感である)それは、「書簡の全文」を読めば、金正恩に対する「言及ぶり」と不規則発言をした交換を区別している点から見て、私にはそう見える。というよりもトランプ大統領は、現体制のままでは「会談できない」こう主張しているように私には見えるのである。「側近を切る」これは、まさに北朝鮮の体制の不満分子を結束しかねない。危険性をはらむ。金体制の弱体化・経済制裁での北朝鮮経済の崩壊この両にらみ。このように私は推測する。だからこそ、私は、今回のトランプ大統領の決定を強く支持するものである。以下書簡の全文(和訳)である。親愛なる委員長へ 我々は、双方が長い間求め、6月12日にシンガポールで開かれる予定だった首脳会談について、あなたが交渉と議論に敬意を持って時間を割いてくれたこと、また忍耐強さと労力に心から感謝する。 会談は北朝鮮側が望んでいたと我々は知らされていたが、そんなことは全く重要ではない。私はシンガポールであなたと会うことをとても楽しみにしていた。残念ながら、あなたの直近の声明にあった強い憤りとむき出しの敵意をかんがみると、長い間計画していた会談を今開くことは不適当だと、私は考えている。 そのため、この手紙をもって、(米朝)双方にとっては良いことで、世界にとっては不利益ではあるが、シンガポール会談は行わないことをお知らせする。あなたは自国の核能力について語っているが、我々の核能力は大規模かつ強大であり、使わなければならない時が来ないよう神に祈っている。 あなたと私の間で素晴らしい対話がなされてきたと私は感じていた。結局のところ、その対話こそが大事なことだ。いつの日か、あなたに会えることをとても楽しみにしている。一方で、人質を解放してくれたことには謝意を示したい。いま彼らは家族と自宅にいる。素晴らしい振る舞いで、高く評価されるものだった。 もしあなたの考えが変わり、この最も重要な会談をしようと思うなら、遠慮なく私に電話をするか、手紙を書いてほしい。世界、とりわけ北朝鮮は、恒久平和や偉大な繁栄、裕福さを得る素晴らしい機会を失った。こうして失われた機会は歴史上、非常に悲しい時である。以上引用文責 上田 和哉