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カテゴリ:文学
【堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます】宮沢賢治 堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます。 実にひらめきかゞやいてその生物は堕ちて来ます。 まことにこれらの天人たちの 水素よりもっと透明な 悲しみの叫びをいつかどこかで あなたは聞きはしませんでしたか。 まっすぐに天を刺す氷の鎗の その叫びをあなたはきっと聞いたでせう。 けれども堕ちるひとのことや 又溺れながらその苦い鹹水を 一心に呑みほさうとするひとたちの はなしを聞いても今のあなたには たゞある愚かな人たちのあはれなはなし 或は少しめづらしいことにだけ聞くでせう。 けれどもたゞさう考へたのと ほんたうにその水を噛むときとは まるっきりまるっきりちがひます。 それは全く熱いくらゐまで冷たく 味のないくらゐまで苦く 青黒さがすきとほるまでかなしいのです。 そこに堕ちた人たちはみな叫びます わたくしがこの湖に堕ちたのだらうか 堕ちたといふことがあるのかと。 全くさうです、誰がはじめから信じませう。 それでもたうとう信ずるのです。 そして一そうかなしくなるのです。 こんなことを今あなたに云ったのは あなたが堕ちないためにでなく 堕ちるために又泳ぎ切るためにです。 誰でもみんな見るのですし また いちばん強い人たちは願ひによって堕ち 次いで人人と一緒に飛騰しますから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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