昨日も書いたが、手直ししようと思っている50号正方形の作品に、とうとう手をつけた。「とうとう」と言うのは、私としてはいろいろなアイデアを盛り込んだ作品だけに、削り取るのにやはりためらいがある。しかもまだ男女の顔がみつからない。観念だけが先行しているのだ。いま画面にあるのはどうしても納得が行かない。このまま放置しておくことはできない。じつは現在のイメージも2度目のものなのである。起筆したのは2001年だから、もうまる4年以上もグズ付いている。
きょうはまずスピリッツで表面を掃除して、部分的にヤスリをかけて削り、ふたたびスピリッツで拭ってから全体にルツーセを塗った。刷毛を動かし、キャンバスの軽くはずむ音を耳にしながら、ふと、こころが躍っているのに気が付いた。気がはいってゆくのが自覚できる。いま始めたばかりの作業なのに、時間の観念を喪失してずっとやっていたような気がする。キャンバスが行為に淫するように誘惑しているのだ。
ピンと張られたキャンバスは指で軽くたたくと太鼓のような音がするものである。私はいつも新しいキャンバスを木枠に張るたびに、ポンポンとたたいてみる。良い音が響くと満足して、なんだか笑みがこぼれるようなのだ。
キャンバスの誘惑に身もこころもまかせて他愛なく喜んでいる。これじゃァ、やっぱり絵描きになるしかなかったのだな。いまごろそんなことを思っても仕方がないけれど。
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Last updated
Jan 6, 2006 02:26:42 AM
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