きょう3月15日は国税の確定申告最終日。画家ももちろん一般と同じ書類を提出するのだが、ひとつだけ「美術家用」という特別書式の書類がある。手持ち作品(在庫)のリストである。一般商店の棚卸のようなことを画家もやるのだ。そして未販売全作品のリストを作成しなければならない。記入項目は、「制作年月日」「題名等」「号数等」「摘要」となっている。「摘要」という項目には、たとえば画廊に販売依託中であるとか、代金未収であるとか、贈与したとか、破棄したとか、あるいは盗難にあって所在不明であるとか、----まあ、そのようなことを書く。
この在庫作品リストは毎年提出しなければならず、これがなかなかシンドイ。作品が右から左に売れるわけではないから、毎年新作が追加されてゆく。売れた作品を除外して、あとは前年のリストを書き写せばよいのだが、その書き写す作業にうんざりしてしまうのだ。毎年提出期限がちかづいてくると憂鬱になるのである。
「アマチュアとプロフェッショナルなんて、少なくとも芸術に関するかぎり、いったいどこで線引きするんだ!」という人に出会うことがある。
「お説ごもっとも」と返答はするけれど、まさかプロフェッショナル美術家が自作の手持ちを税務署に申告しなければならないとは御存知ないかもしれない。やはり線引きがなくもないのだ。プロフェッショナルというのは自分の作品とはいえ「商品」なのであって、税務署側からみれば準商品生産者ということになる。「準」というのは、未販売の在庫品について課税されるわけではないからだ。しかし画家の収入の元を税務署はしっかり把握しておきたいのである。つまり我々は尻尾を掴まれているのですな。
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