東京は気持よく晴れた一日。散歩がてら近所に買い物に行くと、八百屋に「たらの芽」が出ていた。まさに季節限定の春野菜。福島県の「JA会津いいで」出荷とある。さっそく買う。ラッピングを少し破いて鼻をちかづけてみた。青い香がした。「ああ、春の香だね。味噌和えにしよう。それとも薄い衣をほんの少しつけて、天麩羅にしようか」
「JA会津いいで」というのは喜多方市を中心にする農協とのこと、飯豊山の麓にひろがる野菜の産地である。喜多方市は会津若松市の隣の町で、蔵の町・ラーメンの町として名をあげている。私が会津若松に住んでいた44,5年前は、蔵の町ではあったが、ラーメンで有名になるとは思いもよらなかった。
思い出したことがあるので、ついでだから述べておこう。鈴木清順監督の映画、高橋英樹主演『けんかえれじい』(1966年、日活)は、なかなか面白い作品だが、旧制中学生がたわいもない喧嘩にあけくれるその青春の舞台が喜多方である。なぜ喜多方なのかは分らないが、詮索するほどの理由でもあるまい。とにかく、喜多方なのだ。・・・まあ、それだけを言いたかったのです。
「たらの芽」は、地方によっては「たらん坊」などとも言う。「たら」は、コンピューターのフォントには入っていないが、木ヘンに怱と書く。ウコギのなかまである。茎にも葉にも鋭い棘があるので、「鳥とまらず」という俗称がある。「多羅」と当てて書くこともある。春先に芽を出し、それが3,4cmほどになって若葉を出す寸前に食用にする。昔は山菜として採集していたものだが、現在はどうなのだろう。栽培物なのかもしれない。
物の本によると、タラの木の樹皮は糖尿病に効くとある。煎じて飲むのであろうが、糖尿病に対してどのように効果があるというのだろう。糖尿病は一旦発症してしまうと、完全治癒がむずかしい、あるいは不可能だというから、煎じ薬で治るとも思えない。何にしろ素人療法は危険なので、このブログを読んでの実行はおやめになったほうがよろしかろう。
とりとめもないことを書いた。
鶯にたらの芽のびてしまいけり 虚子
鶯が鳴く頃には、たらの芽を食う時季は過ぎてしまっている。春を心待ちにしている頃の先走りの香りなのである。
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山田維史 《日射しの中の真直ぐな緑》
コラージュ 2007年1月27日