外出ついでにしばらくぶりで大型古書店に立ち寄った。この系列の古書店が扱っている本は、いわゆる蒐書家が言う古書ではなく、新刊のセカンド・ハンド・ブックである。そして概ねがエンターテインメントだ。いまの私には、ほとんど興味がわかない種類の本である。
ところが、どっこい、100円均一の廉価本コーナーにはなかなか捨てておけない本があるのだ。どうやらこの大型書店は、書籍に深い知識があるのではないらしい。ベストセラーとか話題になっている小説等はしっかり仕入れをしてい、それなりの価格をつけている。つまり新刊購読者も、右から左へ売ることを見越しているらしく、カバーの上にカバーをかけて手あかを付けないようにして読み、読み終わるやたちまち売り払ってしまう。そういう本を新刊より幾分値下げして売っていると見た。
それはそれで結構。さらに結構なのは、この100円コーナーである。で、私はその棚を隅から隅まで丁寧にみてゆく。
今日購入した本は次のとうり。
★ 市村玖一『新潟県農業運動史 ―写真史実― 増補改訂版』(創作舎:1982)
在野の郷土史研究家による実証的な農業運動史の労作。巻末に「新潟県小作争議略年表」「農民組合発展系統表、戦前・戦後」および詳細な「新潟県社会運動人名」を付す。
★ 土方與志『なすの夜ばなし』(影書房:1998)
著者土方與志(1898-1959)は伯爵家の長男として生まれ、小山内薫とともに日本最初の現代劇場「築地小劇場」を私財を投じて開設し、軍国主義に抵抗して「赤い伯爵」と称された。現代劇の黎明期の演出家として250作品以上を演出している。本書は1947年に出版されたものを、1998年に生誕100周年記念として復刻された。題字ならびに表紙絵は初版の村山知義のものをそのまま使用している。
★ ディック・フランシス、菊池光訳『女王陛下の騎手』(晶文社:1981)
英国王室専属の騎手を勤め、のちに競馬ミステリーの人気作家となったディック・フランシスの半生記。ジャケットの袖に、彼のことばとしてこう書かれている。「障害競馬騎手は誰でも二つの夢を抱いている。一つはチャンピオン・ジョッキーになることである。もう一つは、リヴァプールのエイントリイ競馬場でひらかれるグランド・ナショナルに優勝することである。これは、私が幸運に恵まれて第一の夢を果たし、第二の夢の実現を目前にして、無念きわまりない負け方をした物語である。」
★ 杉本章子『東京新大橋雨中図』(新人物往来社:1988)
著者が直木賞を受賞した長篇小説。文明開化の時代、その時代の光と影を描き「光線画」の画家と称された実在の小林清親を描く。
以上、4册。税込み420円也。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 22, 2007 11:55:19 PM
コメント(0)
|
コメントを書く