先日、22日、雨降るなかで庭の百合が咲いた。この百合を植えてからもう7,8年にもなる。球根を上げもせず、土中に放りっぱなしなのだが、毎年良く花を咲かせる。丈75cm、レモン色の花の直径は16cmほど。一本の茎に三つの花をつけている。なんという名だったか忘れてしまったが、所持している2册の「百合図鑑」には出ていない。尤もこの図鑑は、一つはニューヨークで刊行されたものだし、もう一つはロンドンで刊行された王立キュー植物園の百合の図鑑である。そして、園芸植物は品種改良がはげしく、新しい品種をつくっては名前をつけるので、図鑑に収録するいとまもないと言えよう。
きょうも朝方は雨が降っていた。雨が降ると、なぜか庭の草花は倒れたように身を横たえる。百合もすっかり倒れていたので、支柱を立てて、茎に2箇所ゆるく紐をかけた。
花の種類によって、日暮れとともに花を閉じてしまうものと、開いたままのものがある。百合は夜になっても暗闇のなかで花を開き、芳香を放っている。夜に活動する虫に花粉を運ばせようというのだろうか。
ちなみに、キリスト教文化圏では白百合が聖母マリアの純潔のエンブレムになっているが、この百合は‘L. candidum’という種類で、こんにちでは「マドンナ・リリー(Madonna Lily)」と呼ばれている。昨年、東京国立博物館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」において展観された『受胎告知』にも、大天使ガブリエルがマリアに白百合を捧げて描かれていた。その百合が‘L. candidum’である。さすがにレオナルドは、この百合をきっちり観察して描いていて、花の形状、蕾みの付き方、葉の形状や付方、すべて植物学的な正確さで表現されていた。いや、むしろ事は逆で、レオナルドの絵から近代植物学で言うところの‘L. candidum’と同定できるのである。
閑話休題
朝の雨は、降ったり止んだりしていたが、とうとう日が射すことはなく寒い一日だった。暑がりの私にはちょうどよかったけれど、机に向った私の膝に猫のマスクが抱っこして、するうちに人間の赤ん坊のようにコックリコックリやりはじめた。私も赤ん坊をあやすように、尻のあたりを軽くポンポンと掌でたたいていたが、やがてその私の腕に顔をうずめるようにくっつけて眠ってしまった。すやすやと温かい鼻息が腕にかかる。可愛いものである。
そんなわけで描きかけの筆をやすめて作品をためつすがめつ眺めていたが、もう少しで完成となろう。明日か、明後日か・・・。 ずいぶん長らく製作してきた。終りはパタパタとやってくる。ここを描けば終りだというのではないのだが、とにかく「終った」と思う瞬間があるのだ。そのときが近づいているという予感がする。なんという題名にしようか・・・、『黒髪のイヴ』にしようかな・・・。
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